第15話 願い

屑は社会に出て、同棲相手まで出来たらしい。親は無遠慮に話している。聞かないふりをしていた。


あんな事をした屑が、普通の顔をして幸せに生活している。


私は汚泥の中、足掻いている。這い上がろうとすると、何かが必ず私の足を引っ張り邪魔をする。

私が何をしたのだろう。


私の前世は、罪人だったのだろうか。




私の中の誰かが、プツリと消えた。新しく生まれた誰かもいる。


感覚を制御できない。



そんな時、私の誰かが言った。

『可哀想なのは、私達だけじゃない。消えた命は、誰が癒やしてあげるの?』


女の子だったと、燃やされた後に聞いた。


私は学生時代の友人と、寺に向かった。梅の花が咲く頃だ。


初めて、供養をした。



私が望んだ訳ではない、だけど私が結果消してしまった命。



僅かにすっきりした心で、梅の花を見ていた。あの子は、もう幸せな家庭に生まれ変わったのだろうか。

不幸は、私に置いていけばいい。


あの子は、せめて幸せに。


それを、願った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る