第14話 自らの死を願う

私が屑の部屋の掃除をしていた時、屑がいきなり帰ってきた。


私は、パニックになり部屋のベッドに潜り震えていた。

屑には何か忘れていたものがあり、それを取りに来たのだと言う。

震えている私の部屋を横切り、ゴミは何かを話していた。私はそれが人間の言語として聞き取れなかった。


屑は忘れ物を手に階下に降りると、母と談笑している。信じられなかった。私は泣きながら父に電話した。だけど、「我慢しろ」と言われた。


私は、正気を保てていた事に絶望した。


本当に死にたい時に、死は訪れない。日常の何気ない時に、ゆっくり死は訪れるのだ。


母の弟は、貧しさの為親戚の家に養子に出された。私の叔父だ。その叔父はとても優れていた人で、とあるこの地方の有名な大学の助教授になっていた。海外にも何度も行き、本も出版していた。独身時代はうちに来て、遊んでくれていた。

私は、叔父が好きだった。母より人間としての感情が多い、と感じていたから。


だがその叔父は、自殺した。

椎間板ヘルニアを患っている中、大学内での派閥争いに巻き込まれてノイローゼになっていたと後で聞いた。


飛び降り自殺だった。


結婚して嫁もいて二人の息子もまだ小さく、そんな中、突然の死だった。

自分で飛び降りたので、下半身の修復が困難だったらしい。棺桶は、下は固定されて開けられなかった。



その時私は既に病んでいて、叔父の勇気に感心していた。死んだ人を感心するなんて、不謹慎だと分かっている。だけど、私は病んでいたから赦してほしい。


私は、高い所が好きだ。もし私が死を選ぶなら飛び降りるだろう。


まだ、死は私を呼びに来ない。だから、私は高い場所に行けない。何故なら、死のうと何度も高い場所に行ったけど柵を越えられなかった。私は、臆病者だ。


屑が家を出ると、涙は止まっていた。

私の中に、また誰かが訪問した感覚がある。



私の中に、私は何人いるのだろう。今私が話しているのは、誰なんでしょうね。

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