第8話 信頼できる医師との出逢い

心療内科は、予約が満杯で新規は何ヶ月も待たされるらしい。

母が通ってる医師の紹介で、なんとか受け入れて貰えた。


医師は、ある意味医者らしくない人だった。軽いノリで、とてもフランクだった。

最初の診察は母が付き添ったので、私は身内に暴行された汚らしい存在とは言えなかった。

仕事でクレーマーに会い、ノイローゼになっていると話していた。


その病院は、昔私が堕胎した市民病院だった。だが建物は建て替えられて綺麗になっていたから、私は惨めな当時を思い出す事もなかった。


その医師は、個人病院を開いていた。週に一回、市民病院に勤務していたそうだ。

市民病院での診察は、三ヶ月だけ。その後もカウンセリングが続くなら、個人病院に行かなければならないとの事だ。私は迷わず、その医師の病院を選んだ。


母の付き添いは無くなり、私は一人で通うことになった。


私は、悩んでいた。先生に私の枷を話すべきか否か。



何時も様に、医師と対面する。

私は、言葉を迷っていた。何時もの様に「どうですか?」と、語りかけられる。


私はボロボロ泣きながら口を開いた。


「私、実の弟に乱暴されて中絶したんです」


パソコンに向かっていた医師の動きが止まった。

もう、後戻りは出来ない。


私は、今みたいに長い話を始めた。

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