第6話 トマトシチューとソーダでおいしい赤玉パンチ

食い意地の張った人間である。


もう少し掘り下げて書くと、三大欲求に忠実な人間である。


しかし三大欲求のうち、睡眠欲は仕事をしているウイークデーに満たされることはなく、性欲も小心者のため満たすことが出来ない。

目の前に座っている気になる女子社員を、お茶に誘う程度のこともできない。

若いイケメン社員ならともかく、自分のような小太り中年管理職がそのようなことをしようものなら、セクハラ案件、パワハラ案件がすぐに立件してしまう。


そういうわけで、残った食欲に全精力を傾けるしかないわけだ。


食欲は有り余っているため、朝ご飯食べているときに「今夜何食べる?」なんて話をすぐし出すし、晩ご飯食べてる時に「明日は何食べる?」なんて普通に話題にするわけだ。

そんな自分が帰宅する際に、「晩ご飯何?」と妻に必ずLINEで聞くのは、もはや必然といえよう。


今夜の妻の返信は「トマトシチューとトリミンチバーグ」。

どちらも初見のメニューだ。

トリミンチバーグは、まあ鶏ミンチのハンバーグだからつくねっぽいものだろうと想像ついた。

じゃあトマトシチューは?

すぐ浮かんだのはミネストローネだが、妻はミネストローネは割とよく作るし、それならそれで素直に「ミネストローネ」と書くだろう。

それがそうじゃないと言うことは、ベースの味付けにシチューを使っているということかな?

なら併せる酒はワインかな?


などと思いながら、帰り道にあるスーパーの酒おつとめ品コーナーを物色。

今日は残念ながらワインはない。

しゃーないなあと思いながら大量に積まれた小さな紙パックを手に取ると、「ソーダでおいしい赤玉パンチ」。

おお、これはいわゆる赤玉ポートワインではないか!?

原材料を見ると、濃縮還元ぶどう果汁、輸入ワイン、ぶどう、酸味料、etc…とある。

モノホンのワインではないが、ワイン風味飲料ということでセーフだろう。

そう判断して買って帰る。


そしてディナー。

トリミンチバーグは、想像通りつくね。

見たところベースは鶏ミンチとタマネギとニラで、味付けをタレにすれば立派なつくね。


一方のトマトシチュー。

色は想像に反して白。

白?

いや、そのまんまクリームシチューの色じゃん。

何でこれがトマトシチューなのかすくってみると…具がトマト。

皮をむいたミニトマトがそのまんま入ってる。

あー、だからトマトシチューな訳ね。


実は息子はトマトが大嫌い。

だからミネストローネも食べられない。

だけどこのトマトシチューなら、具のトマトさえよそわなければ食べられる。

そんな息子に配慮したメニューな訳ねと納得する。


そしてソーダでおいしい赤玉パンチ。

赤玉ポートワインは買ったことがないのだが、今日買ったブツはアルコール度数16%。

普通のワインより高い。

飲み方を見ると炭酸水で1:2に割ると書いてあるので、ソーダで割る用に赤玉ポートワインを作り替えたものなのだろう。

多分。


ソーダで割って飲むと、そこそこ甘口。

料理と合わないわけではないが、なんかお腹がいっぱいになった気がした。

糖度が高いせいかもしれないけど、単純にご飯二杯食べたせいかもしれない。


今夜も美味しゅうございました。

まる。

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