第16話 実践
じゅりあちゃんの攻撃は続く。しばらく僕はそれを黙って受けていたが、このままでは埒が明かない。
「君はなんでこんなことをするんだ?ちゃんと言ってくれれば僕だって……」
「だまされないよ!お前の前の『14号異形』のよりしろは、そんなことを言って油断させて……パパ達をころしたんだ!」
彼女の攻撃はなおも熱を帯びる。ぬいぐるみ達は僕の肩のあたりまで登ってきたり、足にしがみついたりして、僕の動きを封じる。
「ぐっ……!?」
「爆散!!」
じゅりあちゃんのその叫びにぬいぐるみ達が呼応した。眩しいくらい光を放ったかと思うと、彼らは爆弾となって僕を轟音と炎で包み込んだ。
僕は自分の身体にまとわりついた爆弾たちの突然の爆発でもかろうじて立っていた。服は破れ、相当出血してしまっている。突然のことに痛みすら感じる暇がなかった。
――痛い?
あぁ、あの女の子だ。『幸せの鎖』の女の子が真っ白になりつつある僕の視界の中ではっきりと映っている。
「痛いなぁ……命の危険は無いって言ってたのに」
――あのお姉ちゃんは、信じない方がいいよ
「早希のことか……?何言ってるんだ。あいつはいつも僕のことを……」
血が足りない。頭がクラクラする。
――……いいよ。私を使わせてあげる
――『おかあさん』を、取り戻してね
女の子は幻だった。瞬きの合間に彼女は消えていた。その代わりに僕の全身から流れ出ていた血が止まっているようだ。
「『異形』による超回復の恩恵よ。あの本は、君の意志を受け入れてくれたみたいね」
座っている早希が僕の身に何が起こったのか説明する。彼女は微笑み、自分の思惑通りに僕が『幸福の鎖』を扱えるようになってきていることにご満悦といった様子だ。
「安心してるところ悪いけど、これでおしまいなんだから!」
爆発の瞬間に僕と距離を取っていたじゅりあちゃんは、身体を回復させている間ずっと突っ立っていた。だがそれには理由があったようで、勝ち誇って高笑いをしている。
「なんでじゅりあが笑ってるのかわかる?ようやく準備が整ったってこと。アリス!あいつをころして!」
じゅりあちゃんが呼ぶと、彼女の影から同じくらいの背丈のぼんやりとした黒い人型のモヤが出現した。モヤは目に見えない速さで僕へと向かってくる。
「……っ!」
モヤは勢い任せに僕へ体当たりするつもりのようだ。僕は両手で身体を守ろうと構える。すると、僕の心臓からニ、三本の鎖が飛び出し、周囲の木々に巻き付いて僕とモヤの間に鎖の壁を作り上げた。
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