アスファルト
――運命とはこうも交じり合うものなのか。
ワシはこれまで、半世紀にわたって色々な生き物が死んでいく姿を見守ってきた。たとえば真夏のワシは、強烈な日差しのせいで60度を超える熱さとなる。かわいそうに、移動に時間がかかるミミズは向こう側まで渡りきる前に、ワシの熱さで干からびて死んでしまうのじゃ。
つい先日も、にゅろにょろと極めて低速で横断していた一匹のミミズがいた。それが宅配便の軽トラックにひかれて、ぺしゃんこにつぶされてしまった。ワシを横断するということは、あいつらにとっては生死を賭けた真剣勝負になるのじゃ。
そして忘れもしない昨年の秋。一匹の母ゴキブリが餌を探してさまよっていたところ、一人の人間に踏みつぶされて殺された。あれは事故だった、母ゴキブリはなぜか急ハンドルを切るように、人間の足元へ突進していったのじゃ。そして一歩を踏み出したとき、ワシの上にはグシャッと無残な姿の母ゴキブリが横たわっていた。まだしばらく生きていたがもはや意識はなく、ただただ命のカウントダウンをするのみじゃった。
そして今、まさか母親が死んだ場所で、息子と人間とが出会ってしまうとは。
あいつには母親のような哀れな死に方をさせたくない。どうか、どうかこの人間と接触しないでくれ。そしてもうこれ以上、ワシの上で無駄死にするのは勘弁してほしいのじゃ。
お前はまだ若い。この世でやるべきことが、まだまだあるはずじゃ。
頼むからワシに悲しみを刻んだまま、あの世へ逝かないでおくれ。
G線上のゴリラ URABE @uraberica
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