第23話 把握せよ現状

俺の名は宮田 景人みやた けいと。ひょんなことから恋愛ゲーの世界に転生して二か月程になる。

……いや、実際には「ひょんなこと」ではないが、今はとりあえず置いておこう。

最近ではこの世界、並びに生活が肌に馴染んできたことを実感できているが。

残念ながら俺が美少女たちに囲まれながら暮らす時間は最初から一年もない。


何故なら来年の4月1日までに誰かと恋仲にならないと、俺の死は確定するからだ。

神様の優しさ。と敢えて受け取るが、少なくとも状況としては決して悪くはない。

逆に言えばそれまではこの男の幸せを凝縮したような時間を過ごせるわけだから。


俺なんかには勿体ない美少女たち、そして出会った彼女との近況を書き記す。


――――――――――――――――――――――――――


(……日記ってこんな感じだったか?)


「まあ、いいや。忘れないために一応書いていこう」


――――――――――――――――――――――――――


まず現状の把握として、この世界の俺は愛恋高校の男子高校生だ。

ヒロインは現時点で4人。簡単に表すと幼馴染穂乃花ツンデレ千代先輩城花ギャル可憐

(正確には妹と謎の女性もいるが、なぜだか説明書に書かれてないので省く)

改めて思うのは、彼女たちは俺なんかには勿体ないほどに素敵な女性たちである事。


誰と付き合えても幸福は約束されているが、しかし。

そんな中で俺が出会ったのは、モブキャラクターとして設定されている一人の女性。


数年前に亡くなった幼馴染と瓜二つの春野美玖はるのみくさん。

俺の目的は、期限である4月1日までに彼女と付き合って生き返ること。

それを達成するには余りにも不確定要素が多く、もしかしたら無理かもしれない。

だが、現実世界で伝えることが出来なかった想いを今度こそ伝えるのだ。


……と、少々クサい台詞をノートに残しておき、違う話題へ移るとする。



今日の日付は6月25日の深夜。隣の部屋では妹の宮田みやたかなめが就寝中。

俺も眠気に襲われているが、一度書くと決めた手前途中で終わるわけにはいかない。

というのも、ここ最近は近々行われる体育祭に向けての動きが活発化している状況。

そのため疲労感も溜まっているものの、決して悪いことだけではないのだ。


体育祭の最終プログラムである対抗リレーに俺が選ばれたのである。

勿論アンカーなんて大層な役割ではないが、これは非常にチャンスと考えた。

もしも本番で活躍が出来たら、春野さんたちに良いところを見せられる。


現実だと運動なんてほとんどしなかった俺は、ここだと若さ溢れる身体持ち。

年甲斐もなく張り切ってしまい、このやる気が空回りしないことを祈るばかりだ。


――――――――――――――――――――――――――


「――まあ、こんなところかね」


椅子に座りながら思い切り伸びをして、俺はノートを閉じる。

備え付けで机に付属されている明かりを消し、部屋は途端に闇の世界。

約0.5秒ほど。遅れて聞こえたスイッチの音を聞いて椅子から立ち上がった。


「………………!」


普段は決してしないのだけれど、ベッドへ行く前にふと窓の外を見る。

もう何度も。それこそ毎日思っている、一つの考え。


この世界は、死ぬ前に俺が見ている夢なんじゃないか? と。

正直に言えば神様の力で恋愛ゲーの世界に転生よりも、可能性は高い。

だっておかしいだろう。何故、ゲームであるこの世界の空が――


ここまで綺麗で壮大なんだ。まるで、現実を映しているかのような。


空に輝く星の一つ一つに目を奪われ、ああそういえばと思い出す。

現実世界の俺は、彼女が亡くなってから下を向いてばかりだった。

もしかしたらこの世界はそれを教えてくれているのかもしれない。


例えこれが夢でも、嘘でも、死ぬ間際に見る今際の輝きだとしても。

精一杯出来ることを考え、試し、一歩ずつ先に進んでいこう。

ハーレム物の主人公としての役目。それを背負いながらな。



「……さて、寝るか」

カーテンを閉じてベッドに横たると、眠気が一気に襲い掛かってくる。

次俺が目を覚ませば、体育祭は残り数日後ともう間近。

ここに来て最初の大イベントに備え、作戦もある程度は考え済みだ。


そういう面でも空回りはしないよう気を付けないと、な。ははは……




海永 穂乃花 〇〇〇〇〇〇〇〇 LOVE度8↑

山村 千代  〇〇〇〇〇〇〇  LOVE度7↑

城花 明子  〇〇〇〇〇〇〇  LOVE度7↑

東郷 可憐  〇〇〇〇〇〇   LOVE度6↑↑

宮田 かなめ 〇〇〇〇〇    LOVE度5


春野 美玖  〇〇〇〇〇    LOVE度5↑

………

……

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