6月
第18話 ラッキー(スケベ)デー
不慮の事故で命を失った。と思ったら神様のお陰で少しの間だけ復活。
転生先の世界で一年以内に誰かと付き合えれば、本当に生き返る事ができる。
俺なんかには勿体ないくらいの美女たちの中、見つけたとある女性。
触れることができない「モブ」に設定されている
亡くなった幼馴染に似た彼女と付き合うため、不可能に挑戦して早一か月。
***
『続いて2位は十月生まれの貴方! おめでとうございます!』
朝食を食べながら、テレビから聞こえてくる誕生月占いを小耳に挟む。
普段ならばもう出てる時間だが今日は諸事情でいつもより遅めの登校だ。
妹であるかなめの居ないリビングは物悲しくもどこか清々しい雰囲気漂う。
『さあそして今週の第1位は~……』
未だ眠気が残る俺とは違い、アナウンサーは目覚めの良い大声で結果を挙げる。
こういった占い事は特に信じないけれど、順位が高いと気分は良くなるもの。
はてさて七月生まれである俺は、1位なのか12位なのかどっちだろうかね。
『八月生まれの皆さまです! 何をやっても幸運がついてきますよっ!』
ちくしょう見なければよかった。俺、こういうので当たった事がないぞ。
もうテレビを消してしまおうか、ちょうどトーストも食べ終わったことだし。
「……ん」
そういえば。と、俺は洗い場に食器を置きながらふと思い至る。
ヒロインたちの誕生日って一体いつなんだ? よく考えれば俺は誰のも知らない。
説明書にも書かれてなかったということは、自分から聞けということだろう。
(できることなら、今日で彼女たちの誕生日を聞いてみようか)
最下位が発表された瞬間にテレビを消す。何度も言うが占いなんて信じない。
信じないが、それでも何処か嫌な予感が漂ってくる気がした。
何故だろう今日は、俺の人生史上かなり大変な一日になりそうな気がする……。
***
「遅くなってごめんね。お母さんと戦っててさ」
「朝っぱらから何してんだ海永家は」
遅めな登校の理由、それは幼馴染の
彼女からはメールで「先に行ってて」と言われたが即拒否した。
校内じゃ二人で話せるタイミングも少ないし、何より――
「やっぱり一緒に行けてよかった~」
もう俺の習慣なのだ。穂乃花と隣り合って登校することが、な。
「……ふっ」
こうして歩くと現実世界を思い出す。
あの当時の俺は考えもしなかっただろう、いまの現状。
人生二度目の高校生活は、両手以上に華が沢山である。
「でた、最近よくやってるクールな笑い方」
「別にいいだろこれくらい」
どうやら少しのカッコつけもさせてくれないようで。
自分でも分かるくらい癖がついている笑い方を指摘される。
だってほら、このほうがハーレム主人公っぽいし。
「昔の景ちゃんはもっと大笑いしてたよ……私悲しいです」
「お前は俺の母親か」
ただの雑談ではあるが、そうか。昔のことを言われると難しい。
何を隠そう「俺」という人間はこの世界にきてまだ一か月経らず。
昔話の広げようもなく、そのため今日の目標としていた事についても触れずらい。
「あっ! そこ気を付けて景ちゃん」
この状況で俺が彼女に誕生日を聞けば違和感が発生すること間違いなし。
千代たちならまだしも、幼馴染である穂乃花に聞くのは少し変な話である。
優しい彼女は教えるだろうが、覚えてなかったという悲しみは背負わせたくない。
では、一体どう言えば違和感なく誕生日を教えてもらえ――「危ない!」……。
空を見上げて考え事をしていた俺は、曲がり角にある電柱に気づかなかった。
それを視界に入れたころには既に激突することがもう規定路線だと思っていたが。
「んむっ」
なんだろう。痛みではなく、優しく包まれるようなこの温かみを感じるこれは。
頬に当たる服と、胸元のリボン。鼻に入ってくる妙に落ち着く匂い。
俺は足を止めなかった。否、止める前に受け止めれくれたのだ。
穂乃花。の、胸元が。
「あ、あわわわわ……大丈夫っというか、近いね景ちゃんが?」
自分から助けたくせに慌てる穂乃花。やめろ身体を揺するんじゃない。
こんな所誰かに見られたら勘違いされること間違いなしの状況。
ふむ、今すぐにでも離れるべきではあるが……ちょっとまてよ。
「って、鼻血出てるよ!」
それはおそらく電柱に当たったからではない。理由は察してくれ。
俺は今日、最下位なのだ。いや、もちろん占いを全て信じてる訳ではない。
訳ではないが、所謂このラッキースケベは何かが引っかかる。
家を出る前の嫌な予感が見事に的中しそうだから。
現に、朝の時点から不幸というものが襲ってきているのだ。
電柱に激突……を回避しての穂乃花へ胸ダイブ。
結果的には怪我をせずに済んだ? いや、これはおそらく違うだろう。
今日一日俺に降りかかるのは、ヒロイン達からのラッキースケベ!
これがゲームならばただの良イベントで済む話だったんだがな。
この世界に転生してきた主人公、つまり俺は絶対にぶれてはいけないのだ。
興奮して我を忘れるとか、あり得ないR18展開にはさせない。
(……面白い。占いの最下位なんて跳ね返してやるよ)
「血、制服に付かなくてよかったぁ」
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