第17話 vs東郷 可憐

「あたしの点数、ピッタリ当ててみてよ」


「……」


「質問1。可憐は俺の点数より高いか?」

少しの間考えて、出した質問がこれである。

まずは上か下かを判別するのが答えへの近道。


「それは答えたくないからナシ! 別の2つ!」


「……は、はあ?」

何言ってるのこの子。早速ルール崩壊したんですけど。

流石に今ので質問一つを消化はされないようだが、理不尽だなおい。

……ただまあ、答えないがアリならこちらにも手はある。


一旦質問するのは止め、可憐という人間の性格から考えるとしよう。

まず大前提として、東郷可憐はギャルである。

説明書にも書かれていたし、それは揺らがない事実。

だが、実の所彼女をその見た目や口調以外でギャルと思ったことは無い。

「……なーんで、こっちを見つめてるのカナ」

「いいや、なんでも?」


休み時間に見かけた時も非行に走った所など見てないし、むしろ真面目な部類だ。

例えば今日こうして昼食を共に食べてるが、この少しの時間で真面目さが滲み出てしまっている。


膝を揃え、ハンカチを上に置き、食べ物を口に含んでる時は決して喋らない。

全生徒が見習うべき見本中の見本である。

……というか上品さすら感じるんだが、本当にギャルなのか。


「質問1。その点数を取った時の気持ちは何だった?」


「うーん、最初は残念だったかなぁ」


謎が深まる一言。「最初は残念」……どういうことだ。

返された時点では予想より低かった? いや、それは違うな。

少なくとも今は喜怒哀楽の喜が来てるので低い点数ではないと仮定。

今現在、彼女について分かってることもある。


(千代と訳ありなんだよな、可憐は)


初めてここで会った時の言い合いで聞いた言葉。

「あたしに負けてたくせに」を、俺は思い出す。

これは一体どういう意味があるのか?

思いつくことといえば、やはり勉強関連であろう。

幼い頃は可憐が勝っていたが現在は千代の方が……いや、あの口喧嘩的に今は互角かね。


(真剣な顔して考えてる……そんなに、言う事聞かせたいんだ)


とすれば、必然的に高得点である事は察することが出来るな。

0〜70点辺りを除外し、残念だったという発言的に千代よりは下回っている。


残っているのは71〜89点の間だと信じよう。

さて、ここから答えをピンポイントで当てる方法だが――

「質問2……って。どうした、顔赤いぞ」


「わぇっ!? な、なんでもないし」


?? よく分からんが、まあいい。



「――質問2。お前は、俺の事をどう思っている?」


「!?」

俺の質問に対して驚きを見せる可憐。

え?何々?クイズと関係ない質問はダメ?

おいおい何言ってるんだ可憐よ。最初に理不尽な理由で答えなかったんだから、それぐらい教えてくれ。

「言い辛いなら、好きか嫌いかでもいいぞ」


それに、この質問は可憐の点を当てるための重要な判断材料。

返答次第ではもう正解は手の届く範囲にあるのだ。

昼休憩の終わりを告げるチャイムが鳴り響く前に、今ここで答えさせてくれ。



「…………」

「……嫌いだったら二人だけで食べてない」


なんだこの可愛い生き物は。

聞いてるこっちの方が恥ずかしかったが、これでビンゴ。

顔を背けながらも教えてくれてありがとうな。

分かったぜ、東郷可憐の数学テスト結果。



「85点」


「!」


「俺と同じ、85点……だろ?」


可憐の顔が、別の種類の驚きに変わった。

どうやら図星のようで、中々に良い表情である。

今すぐにでも写真を撮りたい。ダメだろうか。


「〜っ、正解ですよーだ!」


悔しさと恥ずかしさ入り交じった目でこちらを見つめてくる。

ああ、こうして見ると千代と似ているな。

負けず嫌いで、変に子供っぽいところとか。


「当てられて良かったよ」

「意地悪だなぁもう…………それで?」


いや意地悪なのはお互い様だと思うけども。

なんだその、どこか期待した語尾の上げ方は。


「?……」


……あぁ、完全に忘れてた。当てたら何でも言う事を聞いてもらえるんだったな。

クイズに夢中ですっかり頭から消えてたよ。

「もしかして忘れてた系?」

う、図星を返された。



「……いや、今はその権利を使わないでおく」

「えぇ!? そんなのナシでしょ!」

残念ながらアリである。

最初に期間を設けなかったのが悪い。

幼い頃から問題の穴を付くのが好きでな。

これから先、必要になった時に使うのだ俺は。




「もー……変わらないなぁ昔から」


可憐が口を開いた刹那、チャイムが鳴り響く。

今、俺は確かに聞いたぞ。……「昔」?

どういう事かと話そうとしたが、彼女は特に変わりない態度。


放った言葉は無意識なのか、何なのか。

まるで自分が言ったことに気づいていないような。

今の言葉は本当に可憐が喋ったのか……?



***



――そんな出来事が、今日のハイライトだな。

まだまだ分からないことだらけのこの世界。

でも、きっと、ハッピーエンドを迎えてやる。

俺が出来る唯一の方法は、彼女たちを幸せにすることだから。


暗闇の部屋に一筋の光を作るスマホを切り、俺は眠りについた。



海永 穂乃花 〇〇〇〇〇〇〇 LOVE度7

山村 千代  〇〇〇〇〇〇〇 LOVE度7

城花 明子  〇〇〇〇〇〇  LOVE度6

東郷 可憐  〇〇〇〇〇〇  LOVE度6

宮田 かなめ 〇〇〇〇〇   LOVE度5


春野 美玖  〇〇〇〇〇   LOVE度5

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