第11話
女性達は事前の予測通り、最深部にいた。
まとわりつくゴブリンの群を振り払い、洞窟の奥に到着したズンズンは女性達を確認すると外の仲間に知らせるため喉が飛ぶほど叫んだ。
女性達は怯えきっている。
無理もない、只でさえゴブリンに拐われ不安の只中にあるというに突然、見るからに粗暴な大男が乱入し雄叫びを上げたのだから。
ズンズンとて女性が安心するよう優しい言葉の一つでもかけたい所だが、そんな余裕はなし。
これからズンズンは女性達に背を向け、ゴブリンを跳ね返し続けなければならない。
洞窟内はズンズンの進入によりパニック状態、その混乱に乗じた奇襲によりシヌシヌ達は一気に十匹程のゴブリンを駆除した。
先鋒のズンズンだけでなく追加の敵が現れた事を察知したゴブリン達が続々と集まってくる。
ここからは一匹一匹潰しながら前に進んでいく事になる。
前衛にピッゴ、トンジ、ゲンス。
シヌシヌは後衛だ。
呪いの装備は外す事が出来ないだけでなく、破壊された時点でその使用者の命を奪うといわれている。
その理屈に則るとシヌシヌが死ねば爆散隊も全滅すると推測出来る。
あくまでも推測にすぎないが、こればっかりは確かめる訳にもいかない。
爆散隊は命懸けでシヌシヌを守る必要があった。
――上手くいかないな……
シヌシヌは後方から矢を放ち援護する役目だが、先程からどうも上手く飛んでくれない。
元々、弓術は苦手ではなかった、しかし長いブランクで技術も筋力も衰えきっている。
シヌシヌと同じく生きながらに呪いの装備と化したと思われるカコ、彼女と旅をする事でシヌシヌにも能力の引き上げが起こる事を少しは期待していたが、そうはいかないらしい。
カコが心を喪失している事が影響しているのかもしれない。
悲しいが今のカコにはシヌシヌが仲間だと認識出来ていないのだろう。
「痛い!」
シヌシヌの放った矢がゲンスの頬を掠める。
ゲンスは一瞬だけチラッとシヌシヌを振り返ったが、次々迫るゴブリンへの対処で文句を言う暇もない。
――早く調子を戻さないと、先々きついな……。
シヌシヌにも少し焦りが見える。
はやくうううううっはやくしてえええええぇぇぇぇぇ、奥からはズンズンの声。
しかし爆散隊の進攻はジリジリと少しずつしか進まない。
初めから丁寧に潰していく予定、しばらくは耐えてもらうしかない。
「やめて!放して!」
ゲンスの足に一匹のゴブリンが絡み付いた。
更にもう一匹がゲンスに迫る。
シヌシヌは二匹目に向け矢を発射した。
「痛い!」
矢はあらぬ方向に飛び、トンジの背中を襲った。
――まずい!
トンジはバランスを崩し竹槍を持ったゴブリンに乗りかかられている。
そして足元のゴブリンに手を焼くゲンスの目の前には、錆びた鉈を振り上げたもう一匹。
――まずーい!まずいまずいまずい!
ドスッ……。
シヌシヌが急いで放った二射目、今度は鉈のゴブリンを捉えた。
――間に合った……トンジは!?
シヌシヌの目線の先では、駆け付けたピッゴが槍のゴブリンの首を落としている所だった。
――危ない危ない……。
こうやって少しずつ進んでいくしかない、まだ先は長い。
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