絵本 その三



「あ、また絵本読んでる。今日は誰の本読んでるの?」



「今日も夏目漱石です。今私の中で夏目漱石がブームなんですよね」



「ふーん。まぁ、とりあえず読ませてよ」



「いいですよ」









姫「今日は言語のお勉強をしましょう! まずは『あ』の段ね、『あいうえお』。よし、できたわ! 次は『か』の段よ、『かきくけこ』。『さ』の段、『さしすせそ』——」



爺「ああ、姫様。今のところは完璧でございます」



姫「——次は『ら』の段行くわよ、『らりるれお』。あれ? 『らりるれこ』。……違うわね。『らりるれそ』。ん? 『らりるれと』……。『ら』の段だけ全然できないわ!」



 夏目漱石 『こころ』









「どういうこと?」



「姫ちゃんが間違えてるところは『ら』の段の最後ですよね。つまり、『ろ』の場所なんです。だから、ここに入るのは『ろ』で、ここ、『ろ』。『こころ』です。」



「いきなり難易度上がりすぎでしょ……。ぼっちゃんとは大違いだよ」


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