美容室にて 〜弓槻の場合〜



店員「本日はどのくらいにいたしましょうか?」



弓槻「そうだな。まぁ、お姉さんに任せるよ」



店員「承知いたしました。あら?」



弓槻「ん? どうした?」



店員「いえ……。あれ?」



弓槻「大丈夫か? 何かあったのか?」



店員「見えない……」



弓槻「見えないって何が?」



店員「お客様のことが……」



弓槻「?」



店員「実は、わたくし人の髪の毛を見るとその人のことがわかるのですが、お客様のことは何もわからないのです……」



弓槻「なんだそれ。そんなことあるのか」



店員「人の手相や、生年月日などで占いをしている方がおられますように、わたくしは髪の毛で占いのようなことができるのですが、なぜかお客様は何も見えません」



弓槻「そりゃ、万人に占いが上手く嵌れば、占いで食っていける人はもっと増えるだろ。あたしには嵌まらなかったってことだよ」



店員「悔しいですが、そのようですね。……しかし、この髪をわたくしどこがで見たことがあるのですが、どこでしたでしょう……?」



弓槻「髪質が似てる人なんてその辺にいるよ。何もおかしいことじゃないと思うぞ」



店員「いえ、最近です。最近どこかで……。あっ!」



弓槻「ん? どうした?」



店員「あなたのことが一つだけ見えました。おそらく、昨日いらした方の姉妹でしょうね。ですが、それが限界です。あなたの髪からはあなたのことが何も見えません。姉妹なのにこれほど違うのですね……」



弓槻「お姉さんはさっきから何を言ってるんだ? わけわからんぞ」


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