美容室にて 〜侑希の場合〜



店員「本日にどれくらいに……、あら?」



侑希「ん? どうしたんですか? 僕の頭に何かついてますか?」



店員「いえ……、最近何度か見た髪と同じものを感じまして……」



侑希「はぁ……。なんのことですか?」



店員「お客様、大変失礼ですが、お客様のごきょうだいに女性が二人いませんでしょうか?」



侑希「姉か妹が二人いるってことですか? え? なんでわかるんですか?」



店員「実はわたくし、髪の毛のコンディションでその人を占うことができるのです。つい先日、おそらくお客様のごきょうだいと見られる女性がお二方来店いたしまして……。それで、わかったのです」



侑希「へぇー。すごいですね。他に何か僕のことがわかるんですか?」



店員「えー、失礼を承知で、率直に申し上げますと……、お客様は大変面白くないです」



侑希「え? 今僕のこと面白くないって言った?」



店員「あ、いえ、そうではなく、お客様も見ても何も面白いことがないと言っているんです。平凡すぎますから」



侑希「失礼すぎでしょ……」



店員「事実ですから。占いは事実を言わねばその人のためになりません」



侑希「僕髪の毛を切ってもらいに来たんだけど……」



店員「お客様の人生は平凡です。何もおかしなところは……、なっ!」



侑希「え? どうしたんですか?」



店員「見える……、見えます。っ! あなたが彼氏さんだったのですね!」



侑希「なんの話? なんで声を震わせてるんですか?」



店員「以前、あなたの彼女さんが来店されました。彼女は彼氏から最近容姿を誉められないとの悩みを抱えておられます。その彼氏があなただったのですね……!」



侑希「何? ゆきちゃんのこと?」



店員「許せません……! 彼女を誉めない男などもはや犯罪者です。わたくしがみっちりと叩き込んで差し上げましょう……!」



侑希「ハサミ! とりあえず、ハサミを置いてください! やばい! 殺される! 誰か! 誰か助けてー!」



店員「彼女を傷つけたあなたが悪いのです……! 然るべき報いを……!」


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