美容室にて 〜夢葵の場合〜



店員「本日はどのくらいにいたしましょうか?」



夢葵ゆめき「お姉さんにお任せします。かわいければなんでもいいです」



店員「かしこまりました。……あら? お客様?」



夢葵「?」



店員「その、あまりお客様のプラベートに踏み込むのはどうかと思われるかもしれないのですが、最近よくないことが起きませんでしたでしょうか?」



夢葵「……なんですか?」



店員「実はわたくし髪の毛のコンディションでその人のことを占うことができるのです。それで、お客様は最近……」



夢葵「へー、そうなんですね」



店員「やはり信じてもらえませんか……。そうですね、では、お客様のお名前を当てたら信じていただけますでしょうか?」



夢葵「勝手にどうぞ」



店員「それでは。……、えー、あなたの髪からは、何かキラキラしたものが見えます。輝いている何か……。この感じは、『き』でしょうか。あなたのお名前には『き』が含まれます」



夢葵「……」



店員「そして『き』として輝くものは何かではなく、具体的なものです。『き』を放つもの自体が輝きに満ち溢れたものでしょう。この光は、光輝なものではなく、もっと幻想的なもの……。なるほど。お客様のお名前には『夢』が含まれるのではないでしょうか?」



夢葵「……。そんなのチェックインした時にフロントで見たんでしょ」



店員「ふふっ、そうかもしれませんね。ですが、これはどうでしょう。お客様は最近彼氏さんと別れたのではないでしょうか?」



夢葵「……」



店員「もともと好意があって交際していたわけではなかったが、彼があなたではなく、あなたの身体だけを求めようとすることに憤りを覚え、突き飛ばした。違いますか?」



夢葵「応えたくない」



店員「最近はお兄様とその彼女さんと仲良く遊んでおられるようなので、満足のいく生活を送られているかもしれませんが、このままではいつかはさみしい夜が来てしまいますよ」



夢葵「……なんでそこまでわかるの? 怖いんだけど」



店員「ふふっ、あなたみたいなお方は一番嵌まりやすいタイプです。もうあなたのことはなんでもわかりますよ。昨日の方とは違って……」


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