暖 〜ゆきちゃんとちょっとずつ〜



「最近ようやく、ちょっとは暖かくなってきましたね」



「え? そう? まだまだ全然寒いけど」



「三月の頭ですよ。もう春じゃないですか」



「ぎりぎりというか、全然冬だよ。ほら、今だって暖房ついてるし」



「陽が入ってくる部屋だと日中は暖房いらないくらいにはなってきたと思うんですけど……」



「あ。わかった。ゆきちゃん雪国育ちだからでしょ。だから、常人の寒いがあんまり寒くないように感じるんじゃない?」



「常人のって、普通の人じゃないみたいな言い方やめてください。関東が基準じゃないですよ!」



「まぁ、それは言葉の綾子というか……」



「綾子さんって誰ですか? でも、確かに、寒さへの慣れはちょっとはあるかもしれないですね」



「絶対そうだと思うけどな。僕ん家みたいな雪のない場所とゆきちゃん家だと全然違うんじゃない?」



「そんなに関係あるとは思えないんですけど……。例えば、北海道の人にとっても沖縄の人にとってもは10℃は10℃じゃないですか」



「それはそうかもだけど……。まぁ、ゆきちゃんは他人より早く春を感じやすいってことだね。個人差ってことにしよう」



「私的には一番早く春を感じてる人は服屋さんだと思いますよ。一月の後半にダウンを買いに行こうとしたら、もう春物が売ってました」



「それはちょっと違うんじゃないかな……」


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