侑希さんと帰省編 その九



弓槻「おい侑希」



侑希「何? 姉さん」



弓槻「小僧が来た」



侑希「は? 小僧?」



弓槻「ほら、あいつ」



侑希「小僧……って、雪斗君じゃんか!」



雪斗ゆきと「あ。侑希さん。こんにちは」



侑希「こんにちは。わざわざこんなところまで来てもらってごめんね」



雪斗「いえ、全然大丈夫です」



侑希「ほら、早く上がって」



雪斗「おじゃまします……」



弓槻「おい。待て小僧」



雪斗「はい……?」



弓槻「お前、そっち上座だろうが」



雪斗「……かみざ?」



弓槻「くつだよ。くつ。お前が置いたのは上座だっつたんだよ」



侑希「は? 姉さん何言ってんの?」



弓槻「そっちに置くのはマナー違反だろ。普通は下座に置くんだよ」



侑希「ちょっと姉さん! それはダメだよ! お客さんに何言ってんの! ごめんね、雪斗君。気にしなくていいからね。姉さん雪斗君に謝って」



雪斗「いえ、侑希さん。知らなかった俺が悪いんです。……あの、俺そういうのわからないので教えてもらってもいいですか?」



弓槻「あ?」



雪斗「そういうマナーみたいなのってこれから先必要になるものですよね。だから、教えて欲しいです」



弓槻「……。ほら、玄関見ろ。そっち側が上座、その反対が下座だ。わかったか?」



雪斗「はい。ありがとうございます。勉強になりました」



弓槻「お前なかなかやるな。名前は?」



雪斗「雪斗っていいます。彼祭雪斗です」



弓槻「ってことは、お前が彼祭さんの弟か。あたしは弓槻だ。ほら、上がれよ雪斗」



雪斗「ありがとうございます、弓槻さん。これ、うちの地元の名物で……。よかったら」



弓槻「へー。ありがとう。あしたの朝にでもみんなで食うか」



侑希「何この流れ? 雪斗君修行編でも始まるの?」


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