ゆきちゃんの好きなところ
「ん? ゆきちゃんちょっと元気ない?」
「はい。その、怒られちゃって……」
「仕事で先生に怒られたの?」
「いえ、そうじゃないんですけど。あんまり納得できなくて」
「何かあったの?」
「あの、私がバスに乗ってた時の話です。バス停に着く前、つまり、バスがまだ動いている時に、おじいさんが一人立ち上がって移動を始めました。だから、私そのおじいさんに注意したんです。危ないからバスが止まるまでは動いちゃダメって。そうしたら、すごく機嫌を損ねたみたいで、怒鳴られちゃったんです」
「うーん。確かにそれは君が正しいけど、そういうのはやめた方がいいかもしれないよ。今回は嫌なことを言われるだけで済んだかもしれないけど、変に逆上されてゆきちゃんが怪我とかしたら大変だから」
「でも、バス会社さんがお客さんの安全のために張り紙とかで注意してくれてるのに、わざわざそれを無視してまで危ないことをするなんて間違ってると思うんです……」
「あー。そういうところ」
「? なんですか?」
「僕が君の好きなところ」
「……。急にやめてください」
「僕ならそれで注意を無視した人が危ない目にあっても、自業自得だと思っちゃうから。正しいと思えることを貫けるのは本当にすごいと思うよ。だけど、お願い。約束ね」
「?」
「もう、やめてね。それで君に何かあっても僕助けてあげられないし、君がトラブルに巻き込まれるの、本当に嫌だから」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます