プリン争奪戦 〜ゆきちゃんの大好物〜



「あ、そういえば。今日の帰りに駅前のプリンを買ってきてたんだった。ゆきちゃん食べていいよ」



「本当ですか。私プリン大好きなんです。しかも、駅前のってクリームがいっぱいのおいしいプリンですよね」



「そうそう。結構人が並んでたけど、ゆきちゃん今日家来るからと思って」



「えへへ。ありがとうございます。とっても嬉しいです。昨日じゃんけんで負けちゃって満足に食べられなかったですし」



「じゃんけん? 何の話?」



「ほら、学校の給食のプリンです。一人お休みの子がいたので」



「ん? 余り物じゃんけんのこと?」



「はい」



「え? なんでそれにゆきちゃんが参戦してるの? 君教師だよね」



「え? おかしいですか?」



「おかしいおかしい。普通食べたくても児童に譲るでしょ」



「確かに他の学校はそうかもしれないですけど、私の学校は大丈夫なんです」



「どういうこと?」



「校歌の中に『プリンの前では教師も平等♪』って歌詞があるんです」



「そんなあほな校歌があるか」



「で、ちょっと話が変わりますけど、私の学校の給食の時間は、校長先生とか教頭先生とか学級を持たない先生は色々なクラスで食べることになってるんです。一週間ごとで」



「あー。それはいいかもしれないね。普段あんまり話さない先生と児童が交流できるもんね」



「で、今週は私のクラスで教頭先生が給食を食べてたんです」



「うんうん」



「実はそのせいで、プリンを教頭先生に譲ることになっちゃって」



「は?」



「順調に予選は勝ち上がることができたんですけど、決勝で教頭先生と当たって、激闘の末に負けちゃったんです」



「え? 教頭とゆきちゃんで決勝じゃんけんしたの? おかしいでしょ」



「食いしん坊の山口君が指を咥えている前でおいしそうに頬張ってました」



「山口君に譲れよ」


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