喫茶店

バスで再び駅に戻って、電車に乗り込む。

窓は開けてないが、ほんのり潮の香りを感じる。海が近い。


駅に降りるとより一層香りを感じる。

おぼろげな記憶を頼りに、二人で街を歩く。


そういえばそろそろ飯時だと、小さな喫茶店に入った。昔からあった店かどうか、思い出せない。


二人分のコップを眺めて微笑む。

昔から小柄な俺のほうがたくさん食べた。サーリヤはその身長の割に少食で、こんな店に入れば決まってサーリヤの方に多くの料理を並べられるのがお決まりのパターンだ。

お互い笑いながら皿を移動させるのもそう。

「その身体のどこにそんなに入るの」と言われれば、「お前はその身体をそれっぽっちでどうやって維持してんの」と返す。

体の作りがまるで違うから当たり前なのだが、そんな他愛のない会話が楽しかった。


今日も俺は3人前の料理をペロリと平らげた。サーリヤが残したぶんを俺が食べるのもいつものこと。


帰り際、店の主人にお礼を言うと、にこやかに見送ってくれた。

慈愛に満ちた、優しい眼差しだった。

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