王政魔術学院

駅を出るとそこは大きな広場で、円形の道路がそのままバスターミナルになっている。

学生時代に散々乗ったバスに乗り込むと、これまた見飽きた風景が流れていった。


「懐かしいな」


終点で降りる。そこは王政魔術学院が目の前で、見慣れた母校の柵が延々と続いている。

二人で柵に沿って歩く。


ここに通っていた頃のサーリヤは、その長い黒髪が引きずるほどの長さになっていて、いつもマフラーのように首にぐるぐると巻きつけていた。

その昔なんの気なしに

「暖かそうだな」

と言ったら

「ぶっちゃけめちゃくちゃ重い」

と返ってきて、そのあまりの仏頂面に吹き出してしまったことがある。


品行方正、眉目秀麗ともてはやされたサーリヤが、この時はまるで子どものように頬を膨らせていたのだから、笑うなという方が無理な話だ。


サーリヤの一族は、その髪を一生のうち殆ど切らないらしい。特にサーリヤのように艶のある美しい黒髪は珍しく、そのため家族が変なクセがつくのを嫌がり、結果その長い髪を結い上げることも出来ず、ぐるぐるマフラースタイルが定着した。

俺はその髪を、その艶を美しいと常々思っていたが、当のサーリヤはあまり執着がないらしく、くせ毛で真っ赤な俺の髪を「まるで炎のようだ」と羨ましがった。

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