第23話 ダブルパンツ


 僕は目隠しをしたうえで、2人のパンツを同時に履かせることとなった。

 ラフィンさんとアリシアさんが僕の両脇に立ち、僕がそれを同時に履かせる。

 うう……緊張するなぁ……。


 ただでさえパンツを履かせるのは、集中力のいる作業だ。

 もし万が一変なところを触ってしまえば……どうなるか……。

 まあ、基本的に僕への好感度が高い人たちばかりだから……大事にはならないだろうが。

 それでも、気まずい雰囲気になるだろう。


「で、では……いきますよ!」

「は、はい……!」


 僕以上に、アリシアさんは緊張しているようだ。

 まあ、アリシアさんのようなお嬢様にとっては異性の前で服を脱ぐこと自体、初めてだろうし……。

 それに、試着室のなかは狭くて窮屈だ。

 この密閉された空間に、僕とアリシアさんとラフィンさんの三人。

 変な汗もかいてきたし……すごく独特な雰囲気だ。


「では……ゆっくりと履かせていきますね……」


 一人ずつ履かせるときは、両手を使って最新の注意を払いながら履かせることができる。

 しかし、二人同時に履かせるとなると、片手でパンツをつまむ形になる。

 これではなかなか履かせることができない……。


「ルインさん? お嬢様のお尻とか触ったら……ダメですからね?」

「わわ……わかってますって……!」


 たしかに、あと数ミリでもずれれば、そうなってしまう。

 だが僕は……そうならないように細心の注意を払う。


 でも……この2人って……いちおう僕のことかなり好きなんだよなぁ……。

 そんな2人と密閉空間にこうして裸でって……。

 どうしよう……僕の理性だいじょうぶかな……?

 だが、そう思ってるのはどうやら二人も一緒のようだ。


「…………うぅ……」


 アリシアさんはぷるぷると脚を震わせている。

 あ……ちょっと手がふとももに触れてしまった……。

 ラフィンさんにバレてなきゃいけど……。





 そんな感じで、数分がかりでようやく履かせる。

 もう少しで、履かせ終わるというところまで来た。

 山頂はすぐそこだ。


 だがそんなとき……。

 試着室の外からロゼッタさんの声が聞こえてきた。


「えい……!」

「えい……?」


 ロゼッタさんの掛け声とともに、試着室が大きく揺れる。


 ――ドン!


「うわぁ……!?」

「きゃ……!」

「なにごとですか……!?」


 そのせいで僕たちは大きくバランスを崩してしまう。

 ロゼッタさん……今何をやったの!?

 まさか……僕がこの中にいることを知っていながら……押したのか!?


 そのせいで、僕の手がアリシアさんやラフィンさんに触れてしまう。

 それに連鎖するように、2人はさらに大きくバランスを崩す。

 脚の半分までパンツが引っかかってるから、大きくよろけて、こけてしまう。


「ちょ……! ルインさんなにやってるんですか」

「す、すみません……」


 三人同時に地面に倒れてしまった……。

 しかも……いろいろ揺れたりもつれたりしながらで、とんでもないことになっている。

 ああ……やっちゃったなぁ……。


「その……ルインさま……? お手を退けてくださると……」

「へ……?」


 アリシアさんに言われて気づくが、僕の手はアリシアさんの胸の上にあった。


「すすすす……すみません……!」

「い、いえ……」


「ど、どうしてくれるんですかルインさん!」


 ラフィンさんが激怒する。

 そりゃあそうだ……。


「もうお嫁にいけないです……」


 とアリシアさん。

 僕たちがそんなやりとりをしていると……。

 試着室の上に空いた隙間から、ロゼッタさんがひょこっと顔を出した。


「じゃあ、みんなまとめてルインくんがもらっちゃえばいいんじゃないですか?」

「へ……?」


 僕の経験上、ロゼッタさんの思い付きの提案は……十中八九その通りになる。

 アリシアさんは顔を赤くして……。


「まあ! 正妻であるロゼッタさまからお許しが出ましたわ! ルインさま……!」

「えぇ……!? せ、正妻……!?」


 いつのまにロゼッタさんが正妻ということになったんだ!?

 というかアリシアさんもそれでいいのか……!?


「ま、まあ……お嬢様がそういうのであれば……私も構いません……。そのかわり……責任を持って生涯私たちのパンツを作り続けてください!」

「ええぇ……!? なにいってるのラフィンさん!?」


 てな感じで……なぜだか僕は責任を取らされた……。

 まあ、具体的にはこのあと、みんなでロゼッタさんの部屋に行った。

 そしてそのあとは……まあ、仲良く過ごしたわけだ。


「ふぅ……ただパンツを渡すだけだったのに……どうしてこんなことに……」

「まあいいじゃないですかルインくん! また一歩、覇王に近づきました」

「覇王ってなんですか!?」


 もう僕は……パンツを創るとこうなってしまうのか……!?

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