第20話 オーダーメイドパンツ


 僕たちのギルドはさらに評判を増していった。

 それにつれて、ありがたいことに新たなお客様にも来てもらえることが多くなった。


 中でも、ユミナさんのような有名人は、ほんとうに貴重なお客様だ。

 有名人が僕のパンツを履いてくれることで、驚くほどの宣伝効果がある。


 そして今日また、ある有名人が僕のもとを訪ねてきた。

 彼女の名はアリシア・フィレンツェオ――とある名家のお嬢様だ。


「あなたがルインさん? 私はアリシア・フィレンツェオ。あなた、すごいパンツを創ると聞いてやってまいりましたの」

「は、はじめまして……ルインです。ありがとうございます」


 アリシア・フィレンツェオさんは、とても豪華な馬車に乗ってやってきた。

 名前くらいは僕でも聴いたことがある。

 とてつもない大金持ちで有名なお嬢様だ。


 髪型は金髪縦ロールで、真っ白なドレスに身を包んでいて、いかにもなお嬢様といった感じだ。

 服装のせいで、ユミナさんなみに大きい胸が強調されていて、目のやり場にこまる。


「私のような高貴な人間にふさわしいパンツをつくってもらいたいのですわ」

「は、はぁ……高貴な、ですか……」


 といっても、僕にそんなことできるかなぁ?


「世界に一つだけの、オーダーメイドパンツですわ!」

「が、頑張ります!」


「ではさっそくサイズをはかってくださる……?」

「え、ええ……!?」


 アリシアさんは、そう言うと、おもむろに服を脱ぎだした。

 お嬢様である彼女が、そんなことをするなんておもえなかったので、すごくびっくりした。


「い、いいんですか……!?」

「私がいいと言ってるんです! はやくはかってください!」

「で、では……失礼します」


 僕は恐る恐る、アリシアさんの腰に手を回して、サイズをはかる。

 アリシアさん特注の最強の高貴なパンツを創るには、かなり精密な作業が必要だ。

 僕はありとあらゆるサイズをメモした。


「あ、あの……アリシアさん? 震えているんですが……大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫ですわ……! 私はなにも……怖くありませんもの……!」


 そう言いながらも、僕にはかられている間のアリシアさんは、涙目になって震えていた。

 きっと箱入りのお嬢様である彼女は、僕のような男性とこういったことをしたことがないのだろう。

 そんな彼女がパンツのためとはいえ、これだけ気持ちを抑えてがまんしてくれているんだ。

 僕はアリシアさんに、笑顔になってもらいたい。


 アリシアさんが少しでも、安心できるために、今僕にできることはなんだろう……。


「あの……アリシアさん」

「は、はい……?」


「その……すごく綺麗ですよ」

「……!? へ、……!?」


 アリシアさんは顔を真っ赤にして、頭から煙がでそうなほどにうろたえた。

 僕としては、アリシアさんに安心してもらいたかったんだけど……。

 余計に緊張させてしまったかもしれないな。


「それに……僕は必ずアリシアさんのパンツを創ります。だから、安心してくださいね」

「は、はい……」


 僕はとっさに、アリシアさんの頭を撫でていた。

 そして満面の笑みでアリシアさんに笑いかける。

 すると、アリシアさんは気を許してくれたのか、震えがとまったみたいだった。

 その後も僕はずっと、アリシアさんの手を握っていた。


 おかげで、アリシアさんの震えは止まって、スムーズに採寸作業が終わった。


「よし……! これで全部測れました」

「あ、ありがとうございます……ルインさん……」


 アリシアさんはそう言って、恥ずかしそうに服を着た。

 高貴なお嬢様で、お肌の手入れも行き届いている。

 しかも食生活もいいだろうから、アリシアさんの肌は本当に綺麗だった。


「では、数日中にお渡しできると思いますので……」

「はい、お願いします」


 アリシアさんの注文書によれば、かなりレースの細かいパンツをご所望だ。

 だから普通のパンツをつくるときのようにはいかない。

 かなりの集中力が必要だろうし、練習もいる。

 正直ここまで複雑なパンツを手掛けるのは初めてだ。


 かなり綺麗なパンツだから、上手くできたらユミナさんやロゼッタさんにもプレゼントしようかな。


「では、最後に……アリシアさんの好感度メーターをはかりますね」

「へ……!? そ、それは……」


 いちおう好感度をはかっておかないと、もしもお嬢様に悪い影響でも出てしまえば大変だ。

 アリシアさんが僕にそれほどの好感度を持ってるとは思えないが……。

 さっきも震えていたようだし、もしかしたらマイナスの好感度かも。

 僕はすこし不安に思いながらも、メーターを用意した。


「では、いきますね……」

「あ、あの……!」


 アリシアさんはどうやら好感度をはかられるのを嫌がっているようだ。

 そうか……僕はきっと嫌われてるんだな。

 それがバレるのが嫌で、こうやってもじもじしているんだ。


「大丈夫ですよ、僕は慣れてるんで」

「そ、そうですか……」


 そう言って、僕はアリシアさんをなんとか納得させた。

 そして、いよいよ好感度をはかってみる。


 すると……。


「な……ご……50000!?」

「な、なんですの……!?」


 まさかまさかの、とんでもない数字が出てしまった。

 どこでそこまでの好感度になっているんだろうか。

 僕はしらない間に、アリシアさんに惚れられていたみたいだ。


「あ、アリシアさん……う、うれしいですけど……どうして」

「そ、その……私はあまり男性との交流がありませんの。今日はルインさんに優しく採寸してもらえて……その……お慕いしています」


 アリシアさんは恥ずかしそうにそう言って、そそくさと出ていってしまった。

 これはまた……とんでもない惚れられ方をしてしまったなぁ……。


「また一歩世界征服に近づきましたね」


 なんてロゼッタさんは言いそうだけど、これはしばらくは黙っておこう……。




――――――――――――――――――

【★あとがき★】


少しでも「面白い!」「期待できる!」そう思っていただけましたら。


広告下からフォローと星を入れていただけますと、うれしいです。


皆さまからの応援が、なによりものモチベーションとなります。


なにとぞ、よろしくお願いいたします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る