第19話 両手にパンツで世界征服な件


 ユミナ・ルナフィリアさん、褐色白髪の美少女でありながら、ソロ専のS級冒険者。

 僕は何故だかそんな有名人と、知り合いだ。

 ひょんなことからパンツを履かせる仲になっていた。

 それだけでも信じられないことなのに、さらにとんでもないことになった。





 ある日僕をたずねてユミナさんがやってきた。

 いつものように傷だらけで、ものすごいスピードで走ってきた。

 また無茶な戦いをしてきたのだろう。

 それにしても、あのユミナさんが。

 しかも、僕のパンツを履いたユミナさんが苦戦するような敵って……。

 いったいユミナさんはいつもどんな危険地帯に行ってるのだろう。


「ルインくん……! ルインくんはいるかい……!?」

「え、僕はここですけど……。なんのようですか……?」


 僕はパンツ製造作業の手を止めて、ユミナさんのもとへ行く。


「ルインくん! 私はもっともおおおおっと、強くならなきゃいけないんだ!」

「は、はぁ…………?」


 これ以上強くなってどうするんだろうという気もするが……。

 ユミナさんの強さへの思いは、相変わらず尊敬に値する。

 僕もなにかこうやって打ち込めることが欲しいくらいだ。

 だが、僕にはもうこれ以上のパンツを与えることはできないぞ……?


「ロゼッタさんに聞いたんだがな……」


 とユミナさんは前置いた。

 ロゼッタさん……またなにか企んでいるのか……!?

 僕は嫌な予感がしてきた。

 いったいユミナさんに何を吹き込んだのだろう……。


「ルインくんと……その……さらに親密な関係になれば、もっと強くなれるらしい! 本当か……!?」

「あ、あぁ……まあ、そうですね……」


 確かにユミナさんの言うとおり、僕への好感度がパンツの効果に直結するわけだから、僕と仲良くなれば、それに応じてステータスも上がる。

 だからまあ、僕と親密になればなるほど強くなれるという解釈は、間違いではない。

 間違いではない……んだが、ねえ……?


「私はもっと、ルインくんと仲良くなりたいんだ……!」

「え、えぇ……!?」


 まあ、ユミナさんの気持ちは嬉しい。

 でも、それって、ただ強くなりたいだけなのか、僕と本当に仲良くなりたいというのか……。

 どっちなんだ……?


「あの……ユミナさんの気持ちは嬉しいんですけど……。正直、そういうお客さんは他にもいて……その、パンツの効果を期待してのことだったら、お断りしてるんです」

「そ、そうなのか……!?」


「ええ、すみません」

「だ、だが! 私は個人的に君と仲良くしたいとも思ってる! この思いに嘘はない!」


「えぇ……!? ほ、本当なんですか……!?」

「ああ、本当だ。だって、そうじゃなきゃ、初めに君のパンツを履いた時、あれほどの効果はなかたはずだ」


 たしかに……。

 そういえばユミナさんは、僕のパンツを履いた初めての人だ。

 ユミナさんは最初から僕のことを好きでいてくれたってことか……!?


「嘘だと思うのなら、私の好感度をメーターで測ってくれ!」

「そ、そこまでいうのなら……」


 僕はユミナさんの好感度をメーターで測る。


「ろ、6000……!?」


 これは普通のカップルの60倍の数値だぞ!?

 どれだけユミナさんは僕のことを……!?


「私は最初から、君に興味があって声をかけたんだ! 戦闘一筋だった私が……はじめてきょうみをもった男が、君なんだ! 強くなりたいというのはその口実でもあったんだ……!」

「そ、そうだったんですか……」


 ユミナさんにここまで言われたら、断る気にはなれないな……。

 それに、ユミナさんは僕にとっても大切な人だ。

 ロゼッタさんとユミナさんがいなければ、今の僕はないんだから。


「でも……僕にはロゼッタさんも大事なんです……」

「あ、それなら問題はないぞ!」


「え……!?」

「ロゼッタさんにはお許しをもらっている。彼女はルインくんを独り占めする気はないそうだ。私とルインくんが仲良くすることで、ルインくんの自己肯定感がさらに高まればいいとも言っていたな……」


「な……!?」


 ロゼッタさんは相変わらずぶっとんでるなぁ……。

 最初から、ユミナさんと僕をくっつける気だったんだろうか。


「分かりました……僕もユミナさんには強くなってほしいです。それに、ユミナさんに恩返しもしたい。そしてなにより……僕もユミナさんに惹かれていました」

「本当か……!? 嬉しい……! 私はこういうことには経験があまりないんだ……」


「大丈夫ですよ。僕はこれでも、ギルド中の女の子にパンツを履かせている男です」

「そうか……頼もしいな! ルインくんは可愛い見た目なのに、男らしくて強くて、頼りになる……! 私はそういう君だからこそ、惹かれたんだ……!」


 僕とユミナさんは、それから何度かデートを重ねた。

 ときにはロゼッタさんと3人ということもあった。

 何度めかのデートのときから、かなり仲良くなった。


 仲良くするたびに、ユミナさんはさらに強くなり、それに応じて僕への好感度も加速的に増していった。

 もちろん、それはロゼッタさんも同じだった。

 僕自身の自己肯定も加速度的に上昇。

 まるですべてが歯車のように、ポジティブな連鎖反応を引き起こし、とどまることを知らなかった……。


 もちろん、ユミナさんとロゼッタさんと、3人でも仲良くなった。

 

「ルインくん、これでまたパンツでの世界征服に近づきましたね……!」


 ベッドの上で、僕の横で寝転ぶロゼッタさんが、そう言う。


「だから……世界征服なんてしませんから……ロゼッタさん」


「お! 世界征服か! それはいいな! ルインくんがさらに強い男になるなんて、私はうれしいぞ!」

「いや……しませんって! ユミナさんまで……!」


 まったく……彼女たちは僕をどうしたいんだ……。


「まあ、世界征服とは言わないまでも、ハーレム王にはなれそうですね」

「う……それは確かに否定できないです……」


 実際、こうしてユミナさんロゼッタさんと、両手に花な状況だ。

 もうすでに僕はハーレム王といってもいいかもしれない。


「ぼ、僕は……ロゼッタさんとユミナさんがいればもう幸せですから……!」

「そんなこと言わないで、もっと多くの女の子と仲良くしていいんですよ?」

「そうだぞ! 私はルインくんがもっと強い男になるのは、歓迎だ!」


 などと、どうやら二人とも、僕が他の女の子と仲良くしていても気にしないようだ。

 とはいえ……僕にそこまでの度胸があるかは疑問だが……。


 だんだん僕の感覚も麻痺してきて、こうやっているのが普通に思えてきてしまっている……。

 ちょっと前までの僕なら考えられなかったことだ。


 これも……ロゼッタさんの思惑通りなのかな……。

 もうどうにでもなれという感じだ。

 ロゼッタさんが本気でパンツで世界を獲れというのなら、そうするだろう。

 というか、ロゼッタさんが本気になれば可能な気がするのだ。

 どうかロゼッタさんが本気でないことを祈ろう……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る