第19話 両手にパンツで世界征服な件
ユミナ・ルナフィリアさん、褐色白髪の美少女でありながら、ソロ専のS級冒険者。
僕は何故だかそんな有名人と、知り合いだ。
ひょんなことからパンツを履かせる仲になっていた。
それだけでも信じられないことなのに、さらにとんでもないことになった。
◇
ある日僕をたずねてユミナさんがやってきた。
いつものように傷だらけで、ものすごいスピードで走ってきた。
また無茶な戦いをしてきたのだろう。
それにしても、あのユミナさんが。
しかも、僕のパンツを履いたユミナさんが苦戦するような敵って……。
いったいユミナさんはいつもどんな危険地帯に行ってるのだろう。
「ルインくん……! ルインくんはいるかい……!?」
「え、僕はここですけど……。なんのようですか……?」
僕はパンツ製造作業の手を止めて、ユミナさんのもとへ行く。
「ルインくん! 私はもっともおおおおっと、強くならなきゃいけないんだ!」
「は、はぁ…………?」
これ以上強くなってどうするんだろうという気もするが……。
ユミナさんの強さへの思いは、相変わらず尊敬に値する。
僕もなにかこうやって打ち込めることが欲しいくらいだ。
だが、僕にはもうこれ以上のパンツを与えることはできないぞ……?
「ロゼッタさんに聞いたんだがな……」
とユミナさんは前置いた。
ロゼッタさん……またなにか企んでいるのか……!?
僕は嫌な予感がしてきた。
いったいユミナさんに何を吹き込んだのだろう……。
「ルインくんと……その……さらに親密な関係になれば、もっと強くなれるらしい! 本当か……!?」
「あ、あぁ……まあ、そうですね……」
確かにユミナさんの言うとおり、僕への好感度がパンツの効果に直結するわけだから、僕と仲良くなれば、それに応じてステータスも上がる。
だからまあ、僕と親密になればなるほど強くなれるという解釈は、間違いではない。
間違いではない……んだが、ねえ……?
「私はもっと、ルインくんと仲良くなりたいんだ……!」
「え、えぇ……!?」
まあ、ユミナさんの気持ちは嬉しい。
でも、それって、ただ強くなりたいだけなのか、僕と本当に仲良くなりたいというのか……。
どっちなんだ……?
「あの……ユミナさんの気持ちは嬉しいんですけど……。正直、そういうお客さんは他にもいて……その、パンツの効果を期待してのことだったら、お断りしてるんです」
「そ、そうなのか……!?」
「ええ、すみません」
「だ、だが! 私は個人的に君と仲良くしたいとも思ってる! この思いに嘘はない!」
「えぇ……!? ほ、本当なんですか……!?」
「ああ、本当だ。だって、そうじゃなきゃ、初めに君のパンツを履いた時、あれほどの効果はなかたはずだ」
たしかに……。
そういえばユミナさんは、僕のパンツを履いた初めての人だ。
ユミナさんは最初から僕のことを好きでいてくれたってことか……!?
「嘘だと思うのなら、私の好感度をメーターで測ってくれ!」
「そ、そこまでいうのなら……」
僕はユミナさんの好感度をメーターで測る。
「ろ、6000……!?」
これは普通のカップルの60倍の数値だぞ!?
どれだけユミナさんは僕のことを……!?
「私は最初から、君に興味があって声をかけたんだ! 戦闘一筋だった私が……はじめてきょうみをもった男が、君なんだ! 強くなりたいというのはその口実でもあったんだ……!」
「そ、そうだったんですか……」
ユミナさんにここまで言われたら、断る気にはなれないな……。
それに、ユミナさんは僕にとっても大切な人だ。
ロゼッタさんとユミナさんがいなければ、今の僕はないんだから。
「でも……僕にはロゼッタさんも大事なんです……」
「あ、それなら問題はないぞ!」
「え……!?」
「ロゼッタさんにはお許しをもらっている。彼女はルインくんを独り占めする気はないそうだ。私とルインくんが仲良くすることで、ルインくんの自己肯定感がさらに高まればいいとも言っていたな……」
「な……!?」
ロゼッタさんは相変わらずぶっとんでるなぁ……。
最初から、ユミナさんと僕をくっつける気だったんだろうか。
「分かりました……僕もユミナさんには強くなってほしいです。それに、ユミナさんに恩返しもしたい。そしてなにより……僕もユミナさんに惹かれていました」
「本当か……!? 嬉しい……! 私はこういうことには経験があまりないんだ……」
「大丈夫ですよ。僕はこれでも、ギルド中の女の子にパンツを履かせている男です」
「そうか……頼もしいな! ルインくんは可愛い見た目なのに、男らしくて強くて、頼りになる……! 私はそういう君だからこそ、惹かれたんだ……!」
僕とユミナさんは、それから何度かデートを重ねた。
ときにはロゼッタさんと3人ということもあった。
何度めかのデートのときから、かなり仲良くなった。
仲良くするたびに、ユミナさんはさらに強くなり、それに応じて僕への好感度も加速的に増していった。
もちろん、それはロゼッタさんも同じだった。
僕自身の自己肯定も加速度的に上昇。
まるですべてが歯車のように、ポジティブな連鎖反応を引き起こし、とどまることを知らなかった……。
もちろん、ユミナさんとロゼッタさんと、3人でも仲良くなった。
「ルインくん、これでまたパンツでの世界征服に近づきましたね……!」
ベッドの上で、僕の横で寝転ぶロゼッタさんが、そう言う。
「だから……世界征服なんてしませんから……ロゼッタさん」
「お! 世界征服か! それはいいな! ルインくんがさらに強い男になるなんて、私はうれしいぞ!」
「いや……しませんって! ユミナさんまで……!」
まったく……彼女たちは僕をどうしたいんだ……。
「まあ、世界征服とは言わないまでも、ハーレム王にはなれそうですね」
「う……それは確かに否定できないです……」
実際、こうしてユミナさんロゼッタさんと、両手に花な状況だ。
もうすでに僕はハーレム王といってもいいかもしれない。
「ぼ、僕は……ロゼッタさんとユミナさんがいればもう幸せですから……!」
「そんなこと言わないで、もっと多くの女の子と仲良くしていいんですよ?」
「そうだぞ! 私はルインくんがもっと強い男になるのは、歓迎だ!」
などと、どうやら二人とも、僕が他の女の子と仲良くしていても気にしないようだ。
とはいえ……僕にそこまでの度胸があるかは疑問だが……。
だんだん僕の感覚も麻痺してきて、こうやっているのが普通に思えてきてしまっている……。
ちょっと前までの僕なら考えられなかったことだ。
これも……ロゼッタさんの思惑通りなのかな……。
もうどうにでもなれという感じだ。
ロゼッタさんが本気でパンツで世界を獲れというのなら、そうするだろう。
というか、ロゼッタさんが本気になれば可能な気がするのだ。
どうかロゼッタさんが本気でないことを祈ろう……。
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