第17話 パンツを履かせまくった。


 僕が直接パンツを履かせると効果がある。

 どうやらそのことは、確かなようだった。

 手始めに、まずはギルド職員全員に履かせることになってしまった。


 当然だ、ギルド職員のステータス向上は、直接売り上げにつながる。

 僕のパンツ以外でも、かなりの商品が売り上げを伸ばしている。

 パンツを履いた女の子たちが作る製品のクオリティも、爆発的に上がっているからだ。


「ロゼッタさん……本当にやるんですか……?」

「もちろんです! みんな、ルインくんにパンツを履かせてもらいたがってますよ!」

「えぇ……そうなんですか……?」

「それに! お客さんのときとは違って、彼女たちは目隠しなしでもいいそうですよ……?」


「えええええええええええええ!?!?!??!?!!?」


 そんな無茶苦茶な……と思うけど、ロゼッタさんのことだから、冗談ではないのだろう。

 女の子たちがそれでいいとしても、僕のほうの精神が持たない……。


「っていうか……ロゼッタさんはそれで構わないんですか……?」

「ん……? なにがですか?」

「その……嫉妬とかしないんですか?」

「しませんよ? だって、ルインくんはみんなのルインくんですから!」

「えぇ……?」

「も、もちろん私の独り占めにしたいところはやまやまですが……ルインくんは私だけの手に収まるような器じゃないって、最初からわかってますから。なんていったって、パンツで世界を征服しようという男です」


 いや、征服しようとは思ってないが……?

 だが、ロゼッタさんはどうやらそのつもりらしい。

 そしてロゼッタさんがそういうってことは、本当にそうなってもおかしくない。


「ルインくん、パンツの力でハーレム王になるんです!」

「えええ!? な、なりませんよ……!」


 いったいロゼッタさんは僕をどうしたいんだ……?

 でも、なんだかんだで結局、ギルド職員たちにパンツを履かせることになってしまう。

 まあ、彼女たちも望んでいることだから……いいのかな。

 僕はもう流れに身をまかせるように、心を無にしてパンツを履かせまくった。


「ルインくん~次は私のパンツを履かせて!」

「ちょっと、割り込みはなしよ! 次は私なんだからね!」

「あ! 私は目隠しなしでお願いします!」


 なんていうふうに、それはもう大変な騒ぎだった。

 【聖母の篝火】って、こんなギルドだったんだ。

 ここに来るまでのイメージとはずいぶん違う。

 でも、だんだん感覚がマヒしてきた僕もいる。


「ルイン……パンツ、履かせて?」

「こ、ココさんまで……!?」


 普段は無表情なココさんが、恥ずかしそうな顔で僕に迫って来た。

 無防備な下半身のままで、パンツを大事そうに手に持っている。

 おちつけ……僕。

 ココさんは妹みたいなものじゃないか……!

 妹に履かせるときのように、精神を落ち着けて……って、できるかあああああ!!!!


「ん……ルイン」

「あ、ごめんなさい!」

「終わった……?」

「うん、なんとか履かせ終わったよ……ふぅ……」


 僕は震える手を抑えながら、なんとかミッションを遂行した。



 そして、パンツを履かされたがっている女の子は、それだけじゃなかった――。





 ある日、冒険から帰って来たユミナさんがギルドを訊ねた。

 ずいぶんと消耗しているようで、血と汗でかなり見違えてしまっていた。


「ルインくんはいるかい……?」

「ど、どうしたんですかその傷……!」


「いや、ちょっと強敵にぶつかってしまってね」

「だ、大丈夫なんですか……?」


 あのユミナさんが……。

 しかも、僕のパンツを履いた、最強であるはずのユミナさんが……!

 そんな彼女が苦戦をするほどの相手って……。

 いったいどんな生き物なんだろう。


「私にはもっとパワーがひつようなんだ! もっと強くなりたい……!」


 ユミナさんは興奮して僕の手を握ってきた。

 これは……嫌な予感がするね。


「私にパンツを履かせてくれ……!」

「や、やっぱりいいいい!?」


「それだけじゃない! もっと私を細かく採寸するんだ! 手で触っていくらでも調べてくれていい! 私にぴったりの最強のパンツを作ってくれ!」

「ええええええええええ!?!?!?!?」


 ユミナさんの戦いにかける情熱は伝わったけど……。

 採寸は僕以外がやっても同じなんじゃ……?


「あの……採寸は女の子に頼んでください!」

「ダメだ! なにを言ってるんだ君は!」


「えぇ!? そ、それはこっちの台詞なんですが……」

「君がやらなきゃ意味がないだろ! 私は真剣なんだ!」


「いや真剣な顔でそんなこと言われても……ユミナさん、自分の言ってることわかってます?」

「パンツに妥協はありえない! いいからやるんだ! どこからでもかかってこい!」


 ああ、もうユミナさんはこうなったら止められないな……。

 仕方がない……僕もユミナさんのために一肌脱ぐか!

 いや、別にうれしくなんかない……よ?

 ただ僕もユミナさんの力になりたいだけなんだ!


「うう……す、すみませんユミナさん!」

「なにを謝っているんだ? 私がいいと言ってるのに……」


 僕はぎゅっと目を閉じて、ユミナさんを採寸した。





「ふぅ……今日はとんでもない日だった……」


 まるで夢でも見ているのではないかというくらいだ。

 僕は精神的にかなり疲弊して、家に帰った。


「兄さん……!」

「あ、ルルカただいま」

「今日も……パンツ、履かせたの?」

「うん……まあね、仕事だから……」

「ふーん、そうなんだ……」


 なんだかルルカは今日もご機嫌斜めだ。

 どうしたらいいんだろう……?

 あれだけ何枚もパンツを履かせても、僕には女の子の機嫌一つとることができないや。


「私にも、履かせてくれる……?」

「え……なにそれは」


 もしかしてルルカは、嫉妬してるだけなのか……?


「いいけど……そんなんで許してくれるの……?」

「うん……いいから、履かせてよ」

「わかったよ……」


 毎日の着替えを手伝うということで、ルルカは機嫌をとりもどしてくれた。

 妹を着替えさせるくらい、小さいころからやっているから、おやすいごようだ。


「はぁ……僕はどうなっちゃうんだ……」


 僕の頭の中は、パンツのことでいっぱいだ。

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