第16話 パンツ革命


 どうやら僕のパンツが倉庫から何枚か盗まれていたようだけど、問題は何一つなかった。

 今の僕はロゼッタさんやみんなのおかげで、かなり自己評価も高くなっている。

 そのため、僕自身のパンツ制作能力も上がっているのだ。

 今では秒間7枚のパンツを手のひらから射出することさえ可能だ。


「パンツ盗難犯については、兵士団に調査を依頼してあります。じきに捕まることでしょう」


 とロゼッタさんも言っていたし、安心だね。

 僕のパンツによって超強化された兵士団にかかれば、盗難犯の捜査くらいおやすいごようだ。

 そんななにもかもが順調だったある日、妹のルルカが風邪をひいた。


「けほ、けほ」

「だ、大丈夫……? ルルカ」


「大丈夫だよ兄さん……、兄さんのパンツを履いてぐっすり寝ていれば、すぐに治ると思う……から……けほけほ」

「る、ルルカ……!?」


 どうしよう……しんどそうだ。

 以前から、ルルカは病弱な女の子だった。

 でも僕のパンツを履くようになってから、かなり良くなっていたのだ。

 それなのにどうして、また急に……。


「も、もっと強力なパンツがひつようだ……」

「え……兄さん……?」


「ルルカ、ちょっと一回パンツを脱いでくれないか……?」

「へ……!? な、ななな、なにをいっているの!?」


 ルルカの平手が僕の頬を打つ。

 いてて……。

 もしかして、えっちな目的だと勘違いされたのかもしれない。

 だが、決してそんなことはない。

 僕はただ、ある思い付きをしただけだ。


「違うんだルルカ……! パンツの効果を上げるために、必要なことなんだ!」

「え……!? パンツの効果を……? それって、ど、どういうこと……?」


 ルルカは不思議そうに首をかしげる。

 そりゃあそうだ、パンツの効果を高めるために、パンツを脱げなどと言われても、意味が分からないだろう。


「あのね……この前、ロゼッタさんにパンツを履かせたときのことなんだけど……」


 僕は自分の身に起こったことを話し始めた。


「ロゼッタさんにパンツを直接履かせると、なんと普段以上にロゼッタさんのステータスが上がったんだ!」

「ふ、ふーん……」


 パンツの使用効果は、僕への好感度に依存する。

 それとパンツを直接履かせることがどう関係するのかわからないけど……。

 たぶん、パンツを直接履かせると、僕への好感度が上がるのかな……?


「とにかく、僕に直接パンツを履かさせてくれないかな? そうすれば、きっと風邪もよくなると思うんだ……!」

「い、いいけど……」


 ということで、僕はルルカにパンツを履かせた。

 すると、さっきまで苦しそうに咳をしていたルルカが、一瞬でよくなった。


「うそ……ほんとだ……! ほんとによくなったみたい!」

「え……! ほんと……? よかった……! やっぱり、僕が直接履かせることになにか特別な意味があるみたいだね」


 何はともあれ、ルルカの風邪がよくなってよかったよ……。

 僕のパンツにはまだまだ隠された秘密がありそうだ……。

 それにしても、直接履かせるなんて、他の人にはとてもできないな……。


「……で、兄さん……?」

「はい……?」


 元気になったとたん、ルルカはものすごい剣幕で僕のことを睨みつけた。

 いったいなにをそんなに怒っているのだろうか。


、兄さんがロゼッタさんのパンツを履かせるなんてことになったのか……説明してくれる……?」

「え……!? えーっと、そ、それはぁ……」


 し、しまったぁあああああ!!!!

 ルルカを治そうとするあまり、思わず口が滑ってしまったみたいだ。

 なんて説明しようか……。


「そ、それはだね。ロゼッタさんに僕がコーヒーをかけてしまったんだよ……。それで、僕が新しいパンツを用意したってわけさ!」

「ふーん……? かけたのはコーヒーだけかしらね……?」


「え……? そ、それって……どういうこと……?」

「べつに……兄さんはもう大人なんだから、勝手にすれば?」


 ルルカはそういうと、部屋に引きこもってしまった。

 けっこう怒らせてしまったみたいだな。

 でも、なんでルルカがそんなに怒るんだ……?


 ルルカの部屋の壁に耳をつけると、僅かな声が漏れ聞こえてきた。


「兄さんの……ばか」


 うーん、難しい年ごろだ。





 後日このことをロゼッタさんに、話すと……。

 ロゼッタさんはまたとんでもないことを言いだした。


「ルインくん……! プレミアムサービスを始めましょう!」

「え……な、なんですかそれは……。嫌な予感しかしないんですが……」


「パンツを購入してくれた人の中から、希望者限定で、ルインくんが直接パンツを履かせてあげるんです!」

「え……ええええええええ!?」


「これでもっと、業績がアップしますよ! まさにパンツ革命です!」

「で、でも……そんな人いるんですかねぇ……?」


 見知らぬ他人にパンツを履かせてもらいたいと思う女性が、いるなんて思えない。

 しかもお金を払ってまでだ。


「大丈夫ですよ、そもそもルインくんに好感を持っている人しか来ませんので」

「そういう問題ですか……?」


「後ろから目隠しして履かせれば、誰も気にしませんって……!」

「えぇ……?」


 なんだかまた、ロゼッタさんにうまく言いくるめられてしまったようだ。

 だけど結局、プレミアムパンツサービスはそこそこ好評をはくした。

 日に数人程度だったが、けっこう売り上げに貢献した。


「はぁ……僕の心臓が持たないよ……」


 これはどうにかして慣れるしかない……のかな?

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