第13話 パンツ職人に春来たる


「ルインくん……もう抑えられません! 好きです!」

「んん……!?」


 ロゼッタさんは僕にいきなりキスをしてきた。

 もともとロゼッタさんからのアプローチはすごかったけど……!

 僕はどう応えればいいんだろうか。


「ルインくん、私の好感度を計ってみてください」

「え、えーっと……」


 たしか以前計ったときは500だったはず。

 そして一般的な恋人の好感度は100。


「えい!」


 僕は好感度メーターをロゼッタさんに向けた。

 そこに表示された数字は……。


「な……! 2000だって……!?」

「ルインくん、そういうことです。私はもう、ルインくんを我慢できません!」


「ろ、ロゼッタさん……!?」

「ぎゅー!」


 ロゼッタさんは僕を抱き枕のように抱きしめる。


「あ、あの……好感度2000ってどういうことなんですか!?」

「ルインくんのパンツを履いてるうちに……どんどん、さらにルインくんが好きになってしまったんです……!」


「それにしても……2000って……」

「私はルインくんの全部を肯定します。もうルインくんのことだけ考えて生きていたいくらいです。2000っていうのは、そういうくらいの数字です!」


 ま、まあ確かに、普通の恋人が100だもんな。

 その20倍ってことは、絶対服従と言ってもいいかもしれない。


「ろ、ロゼッタさん。落ち着いてください! 僕のパンツ、やっぱりおかしいですよ!」

「そんなことありませんよ! ルインくんの作ったパンツは完ぺきです!」


「いや……一度パンツを脱いでください! そうすれば、好感度がもとに戻るかも……!」

「え……? パンツを脱ぐってことは……!? まさか、ですか……!? ルインくん、私……うれしいです!」


 なんだか誤解して伝わったようだ。

 ロゼッタさんはその場でパンツを脱ごうとする。


「い、今じゃないですよ! それに、そういう意味でもありません……! もう……!」

「そんな……ルインくん!」


 だんだん自分でもパンツの効果が怖くなってきた。

 ロゼッタさんがこの調子なら、他の人はどうなるんだ……?

 まさか他の人たちも、時間経過でだんだん僕のことを好きに……?

 はは……ま、まさかね……。


「と、とにかく……このことは後で話しましょう」

「そ、そうですね……」





 夕方になって、僕はロゼッタさんの部屋に呼び出された。


「こ、ここが……ロゼッタさんの部屋……」


 女の子の部屋に入るなんて、妹以外で初めてだ。

 ロゼッタさんの部屋はギルド内の一室にあった。

 どうやら住居兼職場という感じらしい。


 可愛らしいインテリアの並んだ生活スペースと、事務用具などが置かれたテーブルのエリアにわけられている。

 ロゼッタさんは部屋の一角にあるベッドに腰かけて待っていた。


「ルインくん……」

「ロゼッタさん」


「私、パンツを脱いで待っていました」

「……って、ええ!?」


 まさか今も…………のか?


「そ、そうじゃなくてですね……! 僕の作ったやつじゃなくて、代わりのパンツを履いてください!」

「そんなのありませんよ! もうルインくんの作ったパンツ以外は捨てちゃいました!」


「えぇ……!?」

「ほら……ルインくん、こっちに来てください!」


 僕はこっそり、今の状態のロゼッタさんに好感度メータを使った。

 しかし、その結果は、さっきと同じだ。

 そんな……僕のパンツを履いていないのに……?


「ね? 私がルインくんを好きなのは、パンツを履いていてもいなくても、変わりません!」

「そ、そうですけど……」


「ここまで言ってるのにダメですか……?」

「い、いえ……うれしいです」


 僕はそのまま、ロゼッタさんにキスをした。

 妹には悪いけど、今夜は仕事場から帰れそうにない。

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