第12話 パンツ、売れまくる
後日、このあいだの冒険者たちに、パンツを売った。
すると、彼らがその評判を広めてくれたらしく、他にもお客さんがやってきた。
「すごいですよルインくん! 出だしにしてはなかなかの売上です!」
「よかったです、ロゼッタさん。でも……どうして……?」
ロゼッタさんは素直に喜んでくれているけど、僕としては少し腑に落ちない部分もあった。
「なにがですか……?」
「その……パンツを買いに来てくれる人の多くは、僕のことまったく知らない人ですよね? それなのに、売ってしまって大丈夫なんですか……?」
もしも僕に好感を持ってない人に売ってしまうと、大変なことになる。
そのために一応は買ってくれる人の好感度をメーターで測ることにしてるんだけど、こらが驚いたことにみんなかなり高い数値を記録している。
街の人はみんな僕と初対面の人ばかりだ。
それなのに、どうして……?
と僕は疑問が尽きない。
「心配ありませんよルインくん。そのために、こうして一枚づつ手売りしてるんじゃないですか」
そう、僕たちは今、一枚づつ手売りで販売している。
つまりまあ、僕が作ったっていうことはわかる状態だ。
でも、それとこれとがどういう関係が……?
「それはそうですけど……それがどういう意味があるんです?」
「いいですか? 普通、ルインくんのようなかわいい男の子には、みんな少なからず好感を持ちますよ?」
「えぇ……?」
「それにですね、そのルインくんのパンツを広めてくれた冒険者さんたち、彼らの口コミ効果で、そもそもパンツに対する期待値が上がってるんですよみなさん」
「な、なるほど……そもそも買いにくる人は、すくなからずパンツに好感を持っているわけですね?」
「そうなりますね」
だとしても……だ。
それでもまだ不思議な点がある。
「でも、パンツの好感度と僕への好感度は別なんじゃないですか……?」
「そんなことありませんよ? パンツに対して好感を持っている人は、そのままルインくんに対しても好感を持つはずです」
「えぇ……? そうなんですかねぇ?」
「まあ、そこは直接お客さんに訊いてみましょう」
「え?」
するとロゼッタさんは、先頭に並んでいるお客さんに、おもむろに話しかけた。
お客さんは、今どきの若い女性だった。
【聖母の篝火】が女性ばかりのギルドということもあってか、多くのお客さんは女性だ。
「あの、どうして今回はうちのパンツを買いにきてくださったんですか……?」
「えーっと、最近噂になってて、とてもいいパンツだと聞いてきました」
「なるほど、そうなんですね」
「それと……パンツを売っている男の子が可愛いって聞いてきたんですけど……来て正解でした!」
ロゼッタさんは、僕の方を見て「ほらね」としたり顔だ。
つまりはまあ、評判が評判を呼ぶ感じで、どんどんとパンツや僕への評価が上がっているわけか……。
「ルインくんはなにも心配しなくてもいいんですよ? 私がうまく宣伝しておきますから!」
「あ、ありがとうございます……」
「一度軌道に乗りさえすれば、あとは勝手にどんどんと評判があがります」
「そうなんですかねぇ」
「だって、パンツを履いた人は、その効果に驚いて、さらにルインくんを好きになりますよね? そうすればさらにパンツの効果が高くなり……。以下それの繰り返しです。つまりは、少しでもルインくんをプラスに思ってさえいれば、あとは好感度スパイラルになって売り上げも好感度もうなぎ登りです!」
「我ながらなんだか恐ろしくなってきましたよ……このパンツ」
そしてロゼッタさんの言っていることはほぼ当たっていた。
パンツを買っていった人は、必ずといっていいほど、後日二枚目を買いに来た。
さらにそのお客さんが別のお客さんを連れてきたりして……。
どんどんと売り上げが増えていった。
「さすがはルインくんのパンツですね!」
「いやいや、ロゼッタさんの宣伝のおかげですよ……」
「あの……ルインくん」
「はい……?」
「ほんとうに……ありがとうございます」
「え……。そ、それは……こちらこそ、です」
どうしたんだろう、ロゼッタさんのようすが変だ。
いつにもまして顔が赤く、興奮しているようすだ。
「さっき、ルインくんのパンツを履いた人は、さらにルインくんへの好感度が上がるって説明しましたよね……?」
「は、はい……」
そう、僕のパンツはどうやら、その性質上……。
履いた人が少しでも僕に好感を持ってさえいれば、しだいに好感度が上がっていく仕組みになっている。
ということはつまり……。
「それは……お客さんだけではなく、私たちもなんですよ……?」
「へ……?」
そうだ、ロゼッタさんやギルドのみんなも、僕のことをますます好きになるわけで……。
それと、僕自身もどんどん自信がついていくわけで……。
一番最初にパンツを履いていたロゼッタさんからの僕への好感度は、今やどれほどのものだろうか……と考えれば……。
「ルインくん……もう抑えられません! 好きです!」
「えぇ……!?」
ロゼッタさんはそう言って、僕にキスをした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます