第11話 パンツ職人、絡まれる


 ある日のことだ、ユミナさんとダンジョンデートに出かけて、家に帰ろうとしていたとき。

 冒険者ギルド内にいた見知らぬ男たちが、僕に話しかけてきた。


「おい、お前」

「なんですか……?」


 男たちは見るからに狂暴そうで野蛮な、血気盛んな冒険者。

 顔が赤らんでいることからも、酔っていることがうかがえる。

 筋肉もすごくて、こうして複数に囲まれると威圧感がすごい。


「あのS級冒険者、ユミナがパーティーを組んでいるときくから、どんなやつかと思ったが……。こいつはとんだお笑いぐさだな。まだガキじゃねえか」


 なるほど、僕に絡んできたのはそういう理由か。

 まあ、ユミナさんのような有名人、しかも長らくソロ専だった人が、誰かとダンジョンに行ってるなんてことになれば、噂にもなるよね。

 しかし……これは面倒だな。


「確かに僕はユミナさんとごいっしょさせてもらってます。それがなんですか?」

「こっちは何回もユミナ嬢にふられてるんだ。なぜお前みたいなのを選んだのか、わからねえ。どうやって口説いたんだ……?」


「いや……僕からじゃなくて、ユミナさんに誘われたんです」

「なに……!?」


 僕としても、この状況は謎だ。

 パンツを作っていただけなのに、ユミナさんのような有名人とお近づきになれた。

 なんて言っても、信じてもらえないだろうな……。


「おいガキ! お前の職業はなんだ! スキルは……!?」


 まったく……よりにもよってそれを訊かれるのか……。

 僕を凄腕の冒険者だと勘違いしているのかな?

 とりあえず僕は正直に事実のみを述べる。


「僕は、生産職です。《パンツ製造》スキルしか持ってない、ただのパンツ職人ですよ」


 すると、男たちの顔が固まり、空気が張り詰める。

 僕が冗談を言ったとでも思ったのだろうか。


「パンツ職人だぁ!? てめえ、舐めてんじゃねーぞ! ただの生産職がユミナさんとパーティー組めるわけねえだろ!」

「いや……でも、事実なんです」


「おい! ガキでも容赦はしねえぞ! やっちまえ! いくらユミナと組めるような奴でも、相手はガキだ! しめろ!」

「ちょ、ちょっと……!」


 男たちは僕に襲い掛かってきた。

 暴力は困るなぁ……。


 だって――。


「えい……!」

「うわ……!?」


 僕が勝ってしまうから……。


「なんだコイツ! めちゃくちゃ力がつええぞ!」


 僕は向かってきた男たちを、次々に投げ飛ばす。

 まるで子供みたいに軽いや。

 これがパンツの力か……。


「クソ……! あんた……なかなかやるな……さすがはユミナさんが選んだガキだ」


 男たちはあきらめたのか、ひざをついて僕に謝ってきた。


「俺たちが悪かった。醜い嫉妬だったよ……許してくれ」

「いやまあ、気持ちはわかりますよ。頭をあげてください」


「いったいどうしてそんなに強いんだ!?」

「それは……パンツのおかげなんです」


 僕はパンツの効能について、男たちに語った。

 ロゼッタさんから、隙あらばパンツの宣伝をしてこいと言われているからだ。


「なんだって……!? そんなパンツがあるのか……!?」

「近々、うちのギルドから売り出す予定なので、冒険者さんたちも買いに来てもらえるとうれしいです」


「それはいいことを聞いた! 俺たちも君のような強い男になりたい!」

「でしたらぜひ!」


 ということで、冒険者7人分のパンツの予約を取り付けた。

 パンツを売る前に、僕はその人の好感度を、好感度メーターで測ることになっている。


 そうしないと、万が一僕に対して敵意を持ってる人に売ってしまうと、問題になるからだ。

 冒険者さんたちは、さっきの戦いで僕をリスペクトしてくれたみたいで、大丈夫だった。

 それに、パンツのことを教えたおかげで、さらに好感度が上がったようだ。


「ルインの兄貴! マジ尊敬します!」

「……って、ルインの兄貴!? そ、それはちょっと……」


 僕よりも冒険者さんたちの方が何倍も年上なんだから、それはやめてもらいたい……。


「いや! やめません! あの氷の嬢王ユミナさんを落とした、一流の男なんですから! もっと自信をもってください!」

「えぇ……」


 冒険者にとっては力の強さこそが尊敬の対象らしく……。

 僕が強いとわかると、彼らはそんな風にぼくを慕ってきた。


「ま、いっか……パンツが売れるなら……」


 そんなこんなで、いよいよパンツの売り出しがスタートする。

 僕はロゼッタさんの期待に応えたい一心で、パンツを造り続けた――。

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