第10話 パンツ職人の戦い方。


 僕とユミナさんは、とあるダンジョンにやってきていた。

 ダンジョンの適性ランクはAだという。

 僕はまだ一度も戦ったことなんてないのに……。

 いちおう、僕も自分の作ったパンツを履いているから、ステータスは上がってるはずだけど……。


「さあルインくん、どんどん進もう!」

「ま、待ってくださいユミナさん!」


 ユミナさんは慣れた手つきでどんどんとモンスターを倒していく。

 まあSランクのユミナさんからすれば、Aランクのモンスターなんて楽勝なのかもしれない。

 たしかクエストの内容はジャイアントオーク15体の討伐だったはずだ……。


「あ! あそこにジャイアントオークが……!」

「よく見つけてくれたね、ルインくん! さっそく倒しに行こう!」


 目的を見つけるやいなや、ユミナさんはまたとてつもないスピードで向かっていった。

 なるほど……戦場のユミナさんはさらに動きが激しいな……。

 そりゃあパンツも一瞬で擦り切れるわけだ……。


「くそ……! 僕は全然ついて行けない……」


 まあ、僕は冒険者でもないし、当然だけど。

 それでも、僕もなにかユミナさんにいいところを見せたかった。

 そう思っていた矢先。

 一体のジャイアントオークが、ユミナさんの不意を突いて死角から攻撃を仕掛けようとしていた。

 どうやらユミナさんはそれに気づいていないようだ。


「ユミナさん! 危ない……!」


 僕は咄嗟に、自分の身の危険など顧みずに、気がついたら足が動いていた。

 一直線にジャイアントオークに駆け寄る。

 そして僕は、ユミナさんを庇うようにしてジャイアントオークの前に立ちはだかり……。


「えい……!」


 思いっきりジャイアントオークを押した。

 すると……ジャイアントオークはものすごい勢いで吹っ飛んでいった。


 ――ズドーン!


 ジャイアントオークが壁にぶつかり、大きな穴が出来る。

 今のが……僕の力……?

 パンツでステータスが上がってるとはいえ……今のはなんだ!?


「ルインくんありがとう、助かったよ。それにしても……その力は」

「僕にもわかりません……。咄嗟に身体が動いて……。ただ押しただけなのに」


「それだけルインくんのパンツの強化力がすごいというわけだよ」

「そ、そうなんですかね……」


 ロゼッタさんのおかげもあって、僕の自己肯定感がかなり高まっていたのだろうね。

 そうじゃなきゃ、説明がつかない。

 確かに最近、みんなに褒められてばかりで、さすがの僕もだんだん自分に自信が持てるようになってきた。


「それにしても、ルインくんは反応速度にも優れているね。私が全然気づかなかった敵に気づくなんてね……」

「ま、まあ……ユミナさんからは死角でしたし」


「それを加味してもだよ。きっとルインくんはもともと冒険者としての才能もあるんだね」

「そ、そうなんですか……?」


「S級の私がいうんだから、間違いないよ」

「あ、ありがとうございます」


 S級冒険者のユミナさんから、冒険者としての才能を認められるなんて……。

 ますます僕は自信がつきそうだ。


「なによりも……ルインくんが私をも守ろうとしてくれたのが、一番うれしかったよ。ルインくん、意外と男らしいところもあるんだね……。可愛いばかりだと思ってたけど」

「い、一応僕も男ですから……!」


 よかった、ユミナさんにいいところを見せれて、僕もうれしい。

 いちおうこれはデートなんだし、ユミナさんにはよく思われたい。

 きっとユミナさんくらい強い人になると、護られたりすることも少ないだろうからね。

 今回のことで僕はかなり自信がついたぞ!

 ってあれ……これってロゼッタさんの思い通りってこと……!?


「さあ、それじゃあジャイアントオークも倒したことだし、帰ろうか」

「そ、そうですね……」


 ユミナさんが強すぎたのもあって、あっという間だった。

 ダンジョンの帰り道は僕も何体かモンスターを倒すことが出来た。

 やはりパンツのおかげで、かなりステータスが上がっているようだ。


「る、ルインくん……」

「はい……?」


 ユミナさんは僕の名前を呼んで、顔を少し赤らめながら……。

 なんと手を繋いできた。


「ゆ、ユミナさん……!?」


 ユミナさんのすべすべの手が、温かい。

 あんなに強い人なのに、手はこんなにも小さく柔らかい。


「その……これはデートだから、ね?」

「そ、そうですね……」


 ユミナさん的にはデート=手をつなぐなんだろうか?

 僕たちは少し恥ずかしがりながらも、そのまま手を繋いで街まで帰った。


「じゃあ、今日は楽しかったよルインくん」

「こちらこそ、自信がつきました」


「また……誘ってもいいかな?」

「はい! よろこんで!」


 その日から僕は、たまにまたユミナさんとこうしてダンジョンデートをすることになる。

 あのソロ専のS級冒険者、ユミナさんが他人とダンジョンに行くなんて! とみんなが噂するようになり、徐々に僕も声をかけられたりするようになった。


「なるほどこれがロゼッタさんの言っていた作戦か……」


 なんだかすべてロゼッタさんの言う通りに進んでいる気がするなぁ……。



――――――――――――――――――

【★あとがき★】


少しでも「面白い!」「期待できる!」そう思っていただけましたら。


広告下からフォローと星を入れていただけますと、うれしいです。


皆さまからの応援が、なによりものモチベーションとなります。


なにとぞ、よろしくお願いいたします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る