第6話 女子全員分のパンツを作ってくださいと言われたのですが?


「まずは、ここにいる全員分のパンツを作ってください!」


 ロゼッタさんは僕に、とんでもないことを言ってきた。


「それは……本気で言ってるんですか!?」

「もちろん本気です! ルインくんのパンツをみんなが履けば、きっとうちのギルドの業績はさらにアップします!」

「た、たしかにそうかもしれませんが……」


 でも、このギルド全員分ってさすがに……。

 しかも、聖母の篝火のメンバーは全員がめちゃくちゃ可愛い女の子だ。

 そんなメンバー全員分のパンツを僕がデザインするなんて……とんでもないことだ。


「では、みなさん一列に並んでください!」


 ロゼッタさんは、僕の懸念など無視して話を進めている。

 一列に並ばせて、なにが始まるんだ!?


「では今から一人ずつ自己紹介もかねてルインくんと面談していきます」

「えぇ!?」


「そこで、パンツの細かいデザインなんかも相談していってください」

「なるほど……」


 なんだか全員分のパンツのデザインを知っていることになるなんて、妙な気分だ。

 後ろめたいというか……背徳的な感じだ。

 僕が少々えっちに考えすぎてるんだろうか……?


「で、でも……好感度とかは大丈夫なんでしょうか? みなさんが僕を嫌っていたら、パンツの効果がないんじゃ……」


 僕は不安になって、ロゼッタさんの顔を見る。

 だって、女性ばかりの職場に、僕だけ男なんだ。

 それに、その唯一の男はパンツ野郎と罵られた男だ。

 みんな、僕にパンツの柄を知られるのは、嫌なんじゃないか?


「そんなことは心配ありませんよ!」

「えぇ……?」


「ルインくんは可愛い男の子なんですから! みんな可愛い男の子は大好きです! ここは女の子しかいないギルドですから! むしろルインくんみたいな子なら、みんな大歓迎ですよ!」

「そ、そうなんですか……? そうだといいんですけど……」


 た、確かに……みんなからの視線には悪意は感じられない。

 みんな僕に興味を持ちながらも、警戒はされていないようすだ。


「それじゃあさっそく、最初の人!」


 ロゼッタさんの合図で、謎のパンツ面談が開始した。

 僕の前に大量の女の子たちが列をなして待っている。

 なんだか有名人にでもなった気分だ。

 緊張してるけど、あまりのぶっとんだ事態に、それどころじゃない。


「あ、あの……! ルインくん、はじめまして!」

「は、はじめまして……!」


 うう……どの女の子もすごくかわいいなぁ……。

 それに、部屋には僕しか男がいないし、なんだかいい匂いが充満しているし……。

 僕は理性を抑えるのに必死だった。


「ルインくんのパンツの噂は、ロゼッタさんから聞いています!」

「ど、どうも……」


「私にも素敵なパンツを作ってくださいね!」

「は、はい! 頑張ります」


 そんな感じで、女の子たちが次々に挨拶してくれる。

 中には実際にパンツを見せて、デザインを細かく指定してくる人もいた。

 うう……覚えられるかな……?


「私は、黒のレースがいいです!」

「私は、今履いてるこれと同じものを!」

「私はピンクのフリルのついたかわいいの!」

「私は紫のひもみたいなのを!」


 けっこう意外なことに、大人しそうな子ほどきわどいパンツを求めてきた。

 これは……どういうことなのだろうか。

 僕は、知ってはいけない世界の秘密を知ってしまったような気分だ。


「よーし、じゃあ今から作ります!」


 僕はそれから何度もパンツを作った。

 夕方くらいに、ようやく全員分のパンツが完成した。


「ふぅ……けっこうしんどかった……」


「お疲れ様ですルインくん」


 ロゼッタさんが僕にコーヒーを入れてくれた。

 でも、それ以上に、みんなの満足そうな顔を見て、僕は報われた気持ちになった。


「すごくかわいいパンツだわ! ありがとうルインくん!」

「すごい! こんな履き心地、嘘見たい! まるで履いてないみたいだわ!」

「これがルインくんが作ったパンツなのね……! ルインくんだと思って一生大切に履くわ!」


 みんなの感想を聞いて、僕は「ああ、頑張って作ってよかったなぁ」と思った。

 前のギルドでは、こんなに感謝されたことなかったなぁ……。


「それじゃあルインくん、とりあえずこれが今回の分の特別お給料です。これとは別に、月給もちゃんとお渡ししますので」


 とロゼッタさんが小包をくれた。


「えぇ!? こ、こんなに……!? いいんですか!? 僕はただパンツを作っただけなのに!?」


「当たり前です! ルインくんのパンツはものすごいアイテムなんですから、本当ならもっとお渡ししてもいいくらいです!」


「そ、そうなんですかねぇ……。でも、ありがとうございます!」


 どうしよう……こんな大金。

 とりあえず、妹になにか買って帰ってやろう。


 最初は新しいギルドでやっていけるか不安だったけど、これならどうにかなりそうだ!

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