20 拠り所
自分より高い位置にある、タイヨウの大きな背を追いかけて、トキコは歩いた。
とうに知ってる家だけど、お泊りとなるとワクワクした。
父にはタイヨウの家から連絡してもらう事になった。
家に着いて玄関扉を開けると、タイヨウの母親が立っていた。タイヨウは母親を視界に入れながら、まずトキコを呼んだ。
「入って。俺の部屋行ってて」
トキコが頷いて靴を脱ぐと、トキコの動線にタイヨウの母親が戸惑いながら半身だけ立ち塞がった。
「どなたなの? こんな時間に……どこの子?」
最後にかすかに余所行きの顔に
トキコはタイヨウの顔を見上げた。
「最近仲良くしてる近所の子。ちゃんとした子だよ。保護者に許可も取ってるし。一晩泊まるだけ」
タイヨウの母親の目が吊り上がった。
「そういうことじゃないでしょう!? どうしてお母さんに相談もなしに決めてしまうの!?」
「知らないよ……。あーもー分かった。じゃあ今日は高校の友達の家泊まるから。それならいいっしょ」
「――……ねえ、こんなこと言いたくないけど、いかがわしいことしようとしてるんじゃ、ないのよね?」
「はあっ!?」
タイヨウが声を荒らげて噛みついた。
「違うって! 一人暮らししてる友達の家だって! それが気に食わないなら一晩くらい家に泊めてよ」
それに煽られて、タイヨウの母親の語尾がますますきつくなった。
「今日は予備校行ってたんじゃないの!? 何で……。誰なのその子は。ちゃんとお母さんに分かるように説明してちょうだい!」
「だから、」
「タイヨウまでお父さんみたいにならないでよっ! 私の育て方が悪かったって言いたいんでしょう!? なら謝るわよ。お母さんが全部悪いから、それでいいから。
だから、それは本当にやめて。こんなの私、警察に連絡するわ。
お母さんが何言われようが構わないのよ。ただタイヨウにはまっとうな大人になってほしいだけなの。分かってよ……」
タイヨウは絶句していた。どうしたものか分からない、お手上げ状態の顔。
トキコは、ああ自分はこの家にもお呼びでないな、と理解した。
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