15 幸せ
不幸だと嘆けるのは、自分がもっと幸せでいるべきで、自分という存在が評価されるべきだと思えるから。
今より良い待遇を、と要求できる気力があるという事だから。
ボクは少し羨ましい。自分が不幸なのかもしれないと考えるのは結構疲れる。だから考えない。
だけどもし、もっと冷静になって、自分の周囲の環境を変えていけるようになったら、「確かに過去のボクは不幸だったけど今は幸せだ」と言うのかもしれない。
そう言えるような、道理の判る大人になれる事を目指したかった。
子供だった自分が承認できる大人になれば、救われるんじゃないかという打算があった。
動機が卑しい自己満足だったとしても、誰にも迷惑をかけないんだったら、許してもらえるんじゃないか、と思った。
父は怒ると大抵手を挙げるが、怒りをぶつける先が見つからない場合は黙り込む。
僅かに下顎を突き出すと、唇の下に梅干しの表面のような皺が寄る。この力の入り方は、機嫌が悪いという合図だ。
それを汲み取ったほうがいい時もあるし、無視していれば忘れてくれる時もある。匙加減が肝要だ。
毎日の、その匙加減に、ボクはもう疲れていた。
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