「本好き」の私を形成したルーツ
それぞれが本を読み始めたきっかけを持ち合わせていることと思う。
大体は小中学校時代の朝読書だったり、あるいは読書感想文だったりするだろう。
だが、義務感から生まれる読書に対する苦手意識もまた存在する。
私の場合は幼少期に絵本を擦れるまで読んで聞かせてもらった過去があるため、字を読む、話を読み解くというのは嫌いではなかったし、朝読書や感想文なんかも伝記なんかを読んで過ごした。
とはいえ、伝記も結局は小説や物語とは言い難い。
そんな私が物語、ひいては小説の世界へのめり込んだのは、間違いなくとある作品が起因している。
私はその作品ともう一つの作品をしばしば並べて語るが、決まってもう一つの作品の方が人気が高い。
では、私を小説へ引き摺り込んだのは何か。
言うまでもない。
小学生の夢、ダークファンタジーの金字塔『ダレン・シャン』である。
〇
『デルトラクエスト』と『ダレン・シャン』を並べれば、大体は『デルトラクエスト』に軍配が上がる。
そもそも私が『ダレン・シャン』を読むようになったのは漫画の方が先で、小説も読んでみると面白かった、というのがきっかけであった。
小学校の図書室にある漫画とあって、いつも誰かが先に読んでいたために私が読み始めたのは五巻とかその辺のところだった。
ちょうど味方側に裏切り者がいたとか、そういう壮大なネタバレを含んだ巻数であったために私は大いに後悔した。
それからふと「小説の方は面白いのかな」と、単行本の小説を手に取ったのが始まりである。
少年の冒険心をくすぐるような内容に、あれよあれよと進む舞台。
やがて訪れる命の奪い合いと超ド級の展開。
洋書というのは翻訳にも技術が必要であると思うが、ダレン・シャンは見事にその要件をクリアしていた。
単行本では嵩張り、また値が張ると考え、私は文庫版のダレン・シャンを買い漁るようになった。
私が活字に触れる事をとても良く思ってくれた祖父母のもとを訪れる度、私に「これで本を買いなさい」とお小遣いをくれるようになり、私の読書時間は更に増えていく。
じわじわと終わりが近付く中で、「もうすぐ終わってしまうのがたまらなく悲しい」と感じたのは、それまでの経験上この時が初めてであった。
話の終わりは、主人公が宿敵と共に死に、また新たな姿で過去の世界に放り出され、黒幕の野望を阻止する形で死んでいく。
初めて読んだ時は思惑も目的も理解することは叶わなかったが、読み終えて数年後にようやく理解できた。
深く深く張りめぐらされた過去の因縁を打ち切るのは、他でもない自分自身の手によるもので、更にその野望を阻止するために世に出されたのは、書籍の『ダレン・シャン』─────
当時、これを聞いて「ダレン・シャンってノンフィクションなんじゃないか?過去にバンパイアとかがいたんじゃないか?」と思わずにはいられなかった。
そう思い込んでしまうほど、綺麗で落とし込まれたラストだったのだ。
未だに覚えている。
最後の展開を迎えた時、それを理解した時の衝撃を。
〇
結局、洋書はそれ以降あまり読まなくなった。
書、という形ではあらゆる作家の作品を見てきたが、洋書となると翻訳家の技も必要とするため、どうしても自分にマッチする洋書を見つけられなかったのである。
そう考えると、ダレン・シャンは本当によく出来た小説だった。
一人の小学生に書の魅力を教え、書の世界へ引き摺りこんでしまうのだから。
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