第2話 目覚め
「んっ、うぅぅ」
私は目を覚ました。
辺りを見回すとそこは全く身に覚えのない場所だった。
そういえばと思い出し、私は車に轢かれてその後どうなったんだと思い、身体を見てみるとその姿に衝撃を受けた。
なんと自分の身体が小さくなっていた。
しかし痛みもなければ、苦しくもない、生きているのか死んでいるのか、夢なのか現実なのかそれすらも分からない。
分かるのは車に轢かれたこと、自分の名前、年齢、家族、桐谷だった。
だがおかしな事にどうしても車に轢かれる前の記憶がない。
そして私の年齢は20歳だったはずなのに今の姿は4、5歳くらいになっている。
家族の事も覚えてはいるがどんな暮らしをしていたか、どこに住んでいたかなど全く覚えていない。
なぜだか桐谷という名前は覚えているが、どんな人だったか、どうしてその人だけ覚えているのか分からなかった。
何から何までおかしい。もしかしてこの間車に轢かれて……。
そう思っていると『ガチャ』と部屋の扉が開いた。
「ゆき起きて。ってあら、起きてたのね。朝ごはん出来たから食べなさい。」
部屋に入ってきたのはお母さまだった。
えっ、お母さま?いやいやお母さんだった。
戸惑いながらもベッドから降り、お母さんの後ろを着いて歩きリビングまで着いた。
そこにはお父さんも居てごはんを食べていた。
「ほら、早く顔洗ってきなさい。ごはん出しておくから」
お母さんに言われた通り、顔を洗いに洗面所まで探り探り向かった。
ようやく顔を洗い終えリビングに戻り朝ごはんを食べる。
食べながら私は気になることをお母さんに聞いてみた。
「ねぇねぇお母さん、私昨日なにしてたっけ?」
私のその言葉に顔色一つ変えず当たり前のように応えた。
「え〜もう忘れたの〜。昨日は保育園で遠足に行ったじゃない」
はっ?私は驚いた。遠足に行った記憶もなければ保育園に行ってる事すら知らない。
だが家族に心配をかけさせないように嘘をついた。
「あ〜そうだったね!遠足に行った行った〜」
全く記憶にないが、なるようにしかならないと思うことにしてごはんを食べた。
食べ終えると、そういえばさっきお母さんが言っていた『保育園』というワードに今更だが疑問に思った。
あれ私は20歳じゃなかったんだっけ!?もしかして夢でも見ていた?それともこっちが夢?いやいやもしかして私はやっぱり死んでいてここはあの世?
もう訳が分からず悩んだが、結果今は夢でも見ていたんだと違和感が残るがそう思うことにした。
そしてやっとの思いで保育園に行く準備ができた。
お母さんと保育園バスが来てくれるところまで一緒に歩いていく。
「いい、ちゃんとみんなに元気に挨拶するのよ」
バスが来てくれるところまで歩いていく途中お母さんにそう言われた。
目的地に着きバスが来るのを待ってるとすぐにバスが見えてきた。
あれに乗るんだなと思いながら、バスが来るのを待ってると自分の前にバスが止まり先生が降りてくる。
「おはようございます。ゆきちゃん今日も楽しく遊ぼうね。バスにどうぞ」
私は、降りてきた先生を見て『桐谷』だと直感だがすぐに思った。
先生はニコニコしながら私を見てバスにどうぞと誘導し、お母さんから行ってらっしゃいと言われ私はそのバスに乗った。
私は先生に「桐谷先生?」と呼ぶと「はい」とニコニコしながら振り向いた。
私はやっぱり『桐谷』という人を知っていた。
あと、あの笑顔をどこかで見たことがあるような気がした。
悪役令嬢の私が死んだと思ったら生き返れたが… 金木犀 @drink100
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