悪役令嬢の私が死んだと思ったら生き返れたが…
金木犀
第1話 悪役令嬢
「ちょっと何よこれ!アンタふざけてるの!今すぐこの部屋から出ていきなさい!この出来損ない!」
朝からイライラする。その原因はここに仕え初めて2年程経つメイドの桐谷のせいだった。
私の名前は西園寺ゆき。産まれた時からお嬢様だったから普通の生活なんて知らない。分かりたくもない。
欲しいものはお父様に頼むとすぐ買ってくれるし、メイドを呼べば何でもしてくれる。何も不自由なことなんてない。まぁ、強いて嫌なことをあげるとしたら、お食事会や何のための顔合わせか分からないが行かなければいけないことくらい。正直めんどくさいがニコニコしていればいつの間にか終わるのもあるからそこまで苦ではない。
しかし私の中でどうしてもメイドの桐谷だけは気に入らなかった。
いつもニコニコしていて、どんな罵声を浴びさせても顔色一つ変えずニコニコしていた。
だから何だか無性に腹が立ちもっといじめたくなった。
他のメイドはというと私が冷たくすると、怯え震えた声になり「大変申し訳ありせん」と謝る。
今日だって可愛い髪型にしなさいって命令したのに全く可愛くないし、まるでセンスがない。
それに腹を立てて冒頭の言葉を吐いた。
違うメイドを呼び可愛い髪型にしてもらった。初めからそうしておけばよかったなと思いながらもいつも桐谷を呼んではいじめている。
それが実は私の中で楽しみにもなっていた。
今日の予定は特にないし、お部屋に居てもつまらないから散歩でも行こうと支度を始めた。
いつもならメイドを連れて歩くのだが、今日は一人で歩きたい気分だったのでメイドに付いてこないように伝えた。
準備が整い、お部屋から出ると丁度桐谷と鉢合わせになった。
私は桐谷を睨んだが、それをお構い無しにニコニコと「行ってらっしゃいませ。お嬢様」と言い頭を下げた。
私はその光景にまた腹が立ち「はぁ最悪。せっかくさっきまで少し気分が良かったのに、アンタなんかと会ったから気分がまた最悪になったわ」と桐谷に向かって言った。
桐谷は何事も無かったように「左様でしたか。それでは失礼致します」とだけ言い去っていった。
イライラしながら外を散歩していると、ふと改めて今日は一人なんだなと思った。
充分歩いたのでそろそろ帰ろうと思い自宅の方へと進んでいると、前から猛スピードの車が近づいてきたのが見えた。
「えっ!?うそっ!こっちに来そうな感じじゃない!?」と思い急いで「桐谷助けなさい!」と命令したものの、今日は一人で来たので居るわけもなかった。次第に自分との距離が近づき気づいた時には「キキーッ」とクラクションの音と同時に「ドンッ」と身体に強い衝撃が加わった。
意識を失う前「キャー」だの「人が轢かれたぞ」だの声が聞こえたが、それもすぐに分からなくなった。
まさか次に目を覚ましたら自分が子供になっているとはこの時は知る由もなかった……。
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