3月1日 忘れ物は明日取りに行きます
大嫌いな学校のはずだった。
なんで通ってるんだろうって思ってた。
それでも、最後の学校、もう来ることのない教室。
明日会ってサヨナラになるであろうクラスメイト。
卒業アルバムはほとんど制服姿の写真で、校舎外の写真なんていくつあったんだろう。
思い出なんて教室と体育館、体育祭会場の競技場でいっぱいいっぱいだったんだ、なんて今更ながら理解が追いついて。それがちょっとだけ寂しくもあり、「私たちだけの思い出の形」なんだぞ、って誇らしくもあって。
個人写真のページは折角描いた涙袋も、マスカラまでしてキレイに上がったまつ毛も、薄付きのピンクのリップも意味が無い程の笑顔。陥没して目見えなかった。
号泣したい。ぱっちり開けた目の時にも何枚か写真撮ってたよね?? 悪意ありすぎん笑? なんて友達と笑ってしまった。
アルバムになって初めてマスクを外した同級生をまじまじ眺めて、変な感じがした。静止画の彼や彼女の煌めきはカメラで捉えきれなかったんだな、なんてわかりやすい作り笑いの写真を微笑みながら眺めた。
アルバムの白紙のページは寄せ書きでいっぱいになった。
私の過ごした三年間は無駄じゃなかったんだよね、なんてちょっとだけ感傷に浸ったりなんてして。「また会おうね」の言葉を信じたい。一瞬の思い出だけで終わらせないでよ?
ばいばいを言ってひとりで最後の下校をした。
今日は電車から景色だけを見て帰った。
三年間で一番短く感じた七駅間。
イヤホンから流れる大好きな音楽に耳を傾けると、不思議と涙が零れそうになって、唇を噛み締めていた。
まだ、帰りたくないよ。
まだ、制服を脱ぎたくないんだ。
あと少し、もう少しだけ「女子高生」で過ごせる時間をちょうだい。
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