3月2日 卒業式は青写真を撮った

 将来ビッグになってまた会おう。


 大丈夫。きっと大丈夫なんだよ。

 知り合いのいない初めての場所でひとりぼっちになっても、暗闇の中でもう一年我慢をすることになっても。


 薄っぺらい卒業証書と馬鹿みたいに写真を撮ったじゃない。世間から見れば可哀想な三年を自分たちだけは肯定しようって、ハメを外してさわいだから。


 次に会えるのはいつだろう。


「みんな」で会えるのはいつだろう。


 この先のことなんて、誰がわかるんだろうか。


 それでも、今日のことだけは覚えておきたいの。

 顔も名前も忘れても、三年間の思い出をぎゅっと詰め込んだみたいな今日の気持ちを。


 普段より背伸びしてオシャレな同級生。

 いつもより朗らかに写真に応じる先生方。


 3月2日、今日だけは誰がなんと言おうが春だった。


 制服は今日までなんて言わないでよ。

「またいつか」なんてイヤだよ。

 わがままだなんてわかってる。

 まだ、高校生のままで過ごさせて。

 大人になんてなりたくない。


 教室の扉を開けば会える距離なんて、贅沢な環境だった。

 明日になれば会える距離にはだれもいない。


「遊びに行こう」の約束を果たせる友人は何人いる?

「大人になったらお酒飲もう」、二年後お互い覚えてられるかな?


 たとえこれが口約束になっても。

 ちょっとだけ、未来の私に期待してもいいかな。


 また会えるよって、今日と変わらずみんなに会えるよって。


 大きくなったら、大人になったら、ビッグになったら。


 また会おうね。

 思い出が色褪せないうちに。


 担任には今日渡せなかった花束を贈ろうよ。

 東京から帰って来てね。

 京都のお話聞かせてほしい。

 その日だけはベラルーシから戻ってきてよ。


 だからまた、みんなで会おう。


 できるはずだった思い出はこれからでも間に合うから。

 出来なかった行事、卒業した今から全部やっていこう。


 アルバムはまだ白紙でいっぱいじゃない?

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