第95話 ランテルムを出る

 お別れ会の後、夜遅く宿に戻ると、ランテルム冒険者ギルドマスターのザムトーさんと、知らない騎士が宿の食堂で待っていた。


「お前達、一体どこに行ってたんだ?」


 ザムトーさんが疲れた顔で言うけど。


「今日はお別れ会だったんだ。んで、どうしたの?」


 ザムトーさんはアタシ達に傍らの騎士を紹介した。王宮近衛騎士のガウェインさんだそうな。王宮召喚について、アタシからの返答が遅いので確認に来たのだとか。



「いつ王宮に来るつもりなのか速やかに返答を頂きたい」

「ああ、それ、考えたんだけど、王宮には行かない事にしました」


驚きの表情で固まる二人。


「ようやく手に入った魔道船を人にあげるなんて、やっぱり考えられない。それと引き換えって言うんならSランクも要らない」

「ま、待て待て!Sランクじゃぞ?!」

「Sランクの義務の方が嫌かな。それに、魔道船を一国が持つ事って、国家間のバランス壊しそうで。その片棒担ぐのも嫌なの。だから言ったよね?ダンジョン攻略自力で頑張れって」

「あ、あなたは王命に叛くと言うのですか!」

「そもそも、冒険者って自由人だよね?国民として住まない代わりに、冒険者報酬から税も取ってるし、旅人なら冒険者も商人もギルドに属して納税の義務は果たしてるよ。そんで、その国が嫌なら他に行くだけだし」

「お主、まさか……」


 ザムトーさんが青ざめた顔で聞いてくる。


「うん。こんな国は見限って、アタシは他へ行きます」


 その後は、ザムトーさんが、優秀な冒険者に出て行かれるのは困るだとか、王宮で魔道船を調べたらその設計図が冒険者ギルドと商業ギルドにも提供されることになっていたとか言ってたけど、知ったこっちゃない。


 ガウェインさんも、王命に叛く等手打ちだ!なんて息巻いてたけど、アタシを殺したら空間収納にしまったままの魔道船は二度と出て来ないし、そもそも黙って殺られる気はないし、返り討ちの覚悟はあるのかと指摘したら、ぐぬぬって。



 やっぱり権力者とその手先って録でもないね。



 夜も遅いし二人には帰ってもらいました。明日また来るって言ってたけど、こちらも待ってるとは言ってない。



 黙ってSランクにして、何かの時には協力を頼む、位に進めておけば、今回は丸く収まっただろうに、強引に魔道船取りあげようとするから……



 翌朝ー


 早めに宿を出たアタシ、スーリヤ、ベゼリーと、ナツコさん、マーニャ、ピナッチの計6人で。



 まずは冒険者ギルドへ行き、当直の人に街を出る、とだけ報告。向こうはアタシ達のこと、特に伝えられてないみたいで、カード見せてすんなり終わり。


 後は街の街門を出て、そこからは影異相転移で、まずはリデル村へ。



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