第94話 やっぱりスイーツは正義

 リデル村のアイスクリームの試験販売は好評で、近々、カントスの街にアンテナショップが開店する。


 チョコレートは、ランテルムへの道中で助けた商人トレディンさんが入手したチャコットを、その娘カティーさんが色々研究して、スイーツとしてのチョコレートを完成させたもの。


 チーズケーキはランテルムのチーズ工房製チーズと生クリームを使って、アタシが焼き上げた一品で、ベリージャムも添えてある。



「ああっ、こんな美味しい食べ物がドワーフの作った道具がないと作れない食べ物だなんて!ボクはエルフとして、複雑だよ!」

「うるさいぞスーリヤ!ドワーフの腕が認められないなら、その辺の草でも喰ってろ!」

「草も美味しいけど、スイーツには勝てない」

「草うめぇって、お前は牛かヤギか?ああ、乳ないからヤギだな」

「ぽっちゃり酒樽はスイーツ食べる必要ないだろう?ドワーフは酒だけ飲んでれば良いさ」


 なんだとう?! なんだよ?! と、言い合うスーリヤとベゼリー。どうしてエルフとドワーフが揃うとこうなんだか……


「二人とも、ケンカするならスイーツ没収だよぉっ」

「「ごめんなさいッ」」


 そんな喧しい二人とは別に、ミシェルとケンジは涙を流して喜んでいる。


「この世にこんな美味しいものがあったなんて!……テンション揚がるわぁ!もっと、もっと頂戴っ!」


 ミシェル……戦闘時のように人格変わってるよ。


「ああっ、まさかアイスもチョコも喰えるなんて!ペネロッテ、僕、やっぱり君について行きたいっ!」


 身辺整理してからにしてね。Aランクに降格って、簡単に出来るのかしら?



 そしてユリースとアリシアは。


「もう、こんな美味しいものは簡単に食べられなくなりますね……」

「スイーツはこれから普及するでしょうからまだ良いですよ、ユリース様。旅の途中で頂いた数々の美味しいお料理の方が問題です。もちろん、教えていただいたレシピで今後も精進しますけども」


 アリシアはメイドなので、屋敷で料理する機会がこれまでは貰えなかったそうで。


 ユリースが、専用キッチンの確保は絶対にする、と息巻いてた。この娘もたくましくなったなあ。


 こんな風にお別れ会は進んで。


 アタシはオークションに掛けたドラゴン素材の売上を皆に分配。一人金貨90枚にもなった。アタシの分は金貨20枚にして、残りはドラゴン素材、牙や鱗、骨、竜血等の一部をベゼリーに渡して、使ってもらう事にして。みんな大喜びだった。


 その日は、かなり遅くまでみんなで楽しんだよ。


 まさか、冒険者ギルドと王家の使いが宿で痺れきらして待ってるなんて、アタシは知らない、知ったこっちゃない。





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