第24話 悪騎士成敗

 一角ウサギの大槍の穂先は、寸分違わず剣を持つジェコスの右甲を突き刺す。すかさず槍を垂直に半回転、穂先が奴の右手を切り裂きながら、石突きが股関を下から叩き上げ!


 怯むジェコスに追撃で、左右の足の親指を狙って2連突き!そこを痛めれば踏ん張れまい。


 悲鳴を上げて転がるジェコスの顎は、サッカーシュート的にキック!


 ギルドの入り口から蹴り出したところにダッシュして、広場で転がる奴の左足をむんずと掴み、ジャイアント・スイングか~ら~のっ、


「二度とツラ見せんなっ!!」


 街道方向にぶん投げて奴を星にする。後は奴が生きてようが死のうが知らんっ!



 アタシは冒険者ギルドに戻ってエデンさんの顔を見ると途端に後悔が押し寄せた。


「ごめん、やっちゃった……」


 これでエデンさんや村に迷惑掛けるかと思うと……


「いや、別に構わん。この件はギルドを通して事情説明と厳重抗議をしておくし、お前さんがやらなければ俺がやってた。奴が回復して復讐に来たところで、俺も負ける気はしないしな」


 そんなエデンさんの言葉に、アタシは少しだけ救われた気になったのであった。





 街道脇に放り出されたジェコス。右手、両足の負傷に落下した際の全身ダメージ。粉々に砕かれたプライド。なんとか左手でポーションを探り当て、応急措置を行う。



「くそっ、くそぉっ、覚えておれよ……ランテルム公爵に話して指名手配してもらうぞっ!」


 果たして賓客の招待に真逆の対応をした男を公爵が許すのか。


 実は公爵がペネロッテを招待した理由が報償だけではなく、追加で依頼したいことがあったことなど、ジェコスは知るよしもない。


 ともかく、ランテルム公爵とペネロッテの邂逅は、愚者によって遠退いてしまうのであった。




 予定がまたも狂ってしまったアタシは、もういい加減、出発することにした。権力者ってやっぱり近づきたくないね。自由が一番だよ。



 アイスクリーム普及のため、氷の魔石とかモンスター素材集めに頑張りますか。それと、香辛料、特にバニラ的なものを探したい。



 エデンさんによると、カントスからソトーゲの反対側に向かうと、魔獣の森と言うのがあるらしい。しかも、その森を越えるとドワーフの里があるんだとか。


 ドワーフ郷はアーティザン王国には属していない独立小国家で、道具や武器開発を得意として居るんだって!


 ふむう、装備の新調とか、調理道具の開発に行くのも良いかも。ハンドミキサーとかワッフルメーカーとかも欲しい!



「それじゃあ、行くね。お世話になりました!」


 アタシはエデンさんやソニアさん達に元気よく挨拶する。初めての人里で、相手をしてくれた人がエデンさん達で良かった。ちょっと目尻に涙が浮かぶ。


「おう、行ってこい!この村には何時でも戻ってこい。お前なら大歓迎だ。それと、各地の冒険者ギルドには必ず顔出しとけよ。アイスクリームレシビを登録の際は、この村の関係者と一緒にお前さんの名前も登録するからな。他で販売始まったら、味とか商売のアドバイスも頼むぞ」

「責任重大だねえ。とりま、楽しみにしてるよ!それじゃ、またね!」


 こうして、アタシはリデル村を後にするのでした。

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