第23話 ジェコス・ゴリデス

 ジェコス・ゴリデス……なんか嫌な感じのオッサンだ。初対面で決めつけちゃいけないのかもだけど、最初から敵意を感じると言うか……こんなのを護衛扱いで一緒に旅しなきゃいけないの?


 アタシがエデンさんに目をやると、向こうも少し眉根を寄せている。



「アーダンさんの最後は知らない。アタシ達が見つけた時にはもう、死んでいたし。死因は高いところからの滑落だと思う。極楽鳥の巣は高いところにあったからね」

「そうか……では次の質問だ。お前はアーダンを裏切り、手柄を一人占めしたのではないのか?」


 なっ、言うに事欠いてコイツ、アタシがアーダンを殺したと言ってるの?!


「ちょっと待ってください。彼女はそのようなことはしていない!ギルドの水晶球で審議判定も問題ない!」

「黙れ!ギルド職員ごときが、口答えする気か!俺はアーダン殺害の審議と、ランテルム公爵への虚偽による褒美詐欺を防ぐために来たのだ!」


 あまりの歪んだ思考回路にアタシは唖然とした。なんなの、コイツ!


 ジェコス・ゴリデスって言ったね。そうか!頭のなかゴリラなのか、それで自己紹介「ゴリです」って……違う!今は笑えないギャグを考えている場合じゃない!



「エデンさん……アタシの名誉の為にも、護衛依頼はキャンセルして良いよね? 」

「ああ、すまねえな。まさかこんなのが来るとは……クエストはペナルティがないよう、俺の方からキャンセルさせてもらう」

「貴様、平民の分際で今、なんと言った?!切り捨ててくれる!」


 ジェコスが抜剣する。



 これが世の中の騎士全てなのか、貴族がこうなのか?


 それともこれがランテルム公爵の意思なのか?


 判らないけど、アタシはこう言う人間は大っきらいだ。しかも、エデンさんにまで害を成そうとするとは。


 だから……腹を括ろうか。



「抜くなら、命掛ける覚悟はあるんだね?!」


 アタシは影空間から一角ウサギの大槍を取り出して構える。


「歯向かう気か?言っておくが、抵抗すれば罪人を匿った罪として、この村の住人全てを切り捨てるぞ」


 人質まで捕ろうとするのか!なんて奴、なんて奴、なんて奴!

 でも、その時だった。


「モルダバー伯爵領でランテルム家の騎士が勝手に出来ると思うなよ。それに、冒険者ギルドとしてこれは厳重抗議させてもらうし、各国から独立した冒険者ギルドは実力でマスターが公爵級、サブマスターでも伯爵級の発言力が認められている。木っ端騎士が意気がってるんじゃねえっ!」


 エデンさんの怒声は凄い迫力で、でもそれだけじゃない。その言葉の意味を悟ったのか、ジェコスは顔色が悪くなる。


「さてと。一番良い解決法方があるんだけど。実力勝負にお貴族様かどうかなんて関係ないし、村の人にも危険なことしそうなら……死ねば良いと思うの」


 アタシは峻歩からの素早い一突きを繰り出した。

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