女性と思ってナンパした相手が、実は女装した幼なじみ(男)と発覚、全力で逃げる彼を走って追いかけるところから始まる恋の物語。
幼なじみ同士の関係を描いた現代もののお話です。
一応、男同士の恋物語でもあるのですが、BLというよりは男の娘ものといった印象(個人的には)。
何がいいってふたりの関係性がもう! 「一時期疎遠だったりもした幼なじみ同士」という微妙な距離感、しかもそれが「なんか知らないうちに女装するようになっていた(のをナンパしてしまった)」ところから始まるという、まさに文字通りのロケットスタート。
それも、実際に全力疾走するところなんかもう最高でした。勢いがありながらも自然な描写に、否が応でも惹き込まれてしまう……。
個人的に一番好きなのは、この物語がきっちり恋愛ものの顔をしているところ。
おそらく、作中の出来事や彼らの心境から考えるなら、ストーリーとしてはほぼ友情物語のはずなのですけれど。しかし読後のカタルシスの大きさと質というか、「彼らの辿り着いた解決に対する信頼感」のようなものが、もう完全に恋愛もののそれであるところが本当にたまりません。この満足感……最高……。
独特の文体、主人公の内面にぴったり寄せた文章にも魅力があります。特に素晴らしいのが最後の最後。
結構シリアスでシビアな出来事を内包しながらも、きっちりそれを跳ね除けてくれるところが嬉しい、正道そのものの見事な青春恋愛劇でした。面白かった〜!