第5部 第6話 星まつり
月涼とリュートの婚儀から、半年が過ぎようとしていた。その間、かなりの騒動を起こしてきたのは、言うまでもないが、リュートとの仲は、上々で過ごせていた。
「月の物も安定してきたし・・・あの仲の良さでしょ・・・ねぇ~。思わないルーラン?」
フルルがルーランたちに同意を求めて言う。
「そうですとも。もう、そろそろ、お世継ぎ誕生のお知らせも聞けそうですよね?」
4人は、部屋で仕事をしながら、和気あいあいと話していた。
「あーーー。待ち遠しいですわ!!お二人の仲の良さを見ていると、うっとりしてしまいますもの。」
そこへ、月涼がバタバタと走って帰って来た。
「あーっルーラン!!私の鞭探してるんだけど・・・。知らない?」
「それでしたら、藍様が厩まで、持って行かれましたよ。」
「入れ違いかーーー。」
「お待ちください!リァンリー様、その・・・・衣装は、もしや?藍の騎馬衣では?」
「うん。そうだけど・・・。」
「はっ!!私が着せた騎馬衣は?どうなったのでございますか?」
「だって、あれ、ヒラヒラが多いから乗馬しにくいんだもん!!綺麗だけど・・・。藍が羨ましそうだったから取り換えたよ。」
フルルは、卒倒しそうになった。リュートに妃らしい服装をさせてくれと、再三頼まれているからだ。
だが、もともと男装が好きな月涼にとって、妃らしい服はかなり苦手であり、フルルの目を盗んでは、男装に着替えてしまうのだ。
「そんな・・・リァンリー様・・・。今回のは、かなり、男性の物に近しく仕立てたではございませんか~。」
フルルは、ため息をつきながら言う。
「大丈夫!!言葉遣いは、マシになってきたでしょ。フフフ。」
「そういう問題ではございません!!」
ルーランもルキやラキも、また始まったとばかりに、毎日のやり取りを遠巻きに見て呆れている。
「殿下に怒られて、星まつりに行けなくなっても知りませんよ!!リァンリー様!!」
「えー!!大丈夫だよ。リュート優しいし。フフフ。」
意に介さず答える月涼に、フルルは、ぷるぷると拳に力を入れて怒っている。
「まあまあ、そんなに怒らないでよ~フルル。リュートが来る前に着替えるから。ね。」
そう言うと月涼は、くるりと踵を返して部屋から出ようとして、どんッと何かにぶつかった。見上げるとそこには、リュートのお怒り気味の顔がある。
「むぅぅ・・・。」
変にうなってから、ひょいとよけて逃げようとすると、リュートの後ろから藍も現れた。
「月・・・。ごめん。見つかった・・・。」
「うっ・・・。藍・・・。つかまったのか・・・。」
観念する月涼。だが、助け舟がやってくる・・・待ってましたと顔が綻ぶ月涼。
「リア?まだか?待ちくたびれたぞよ。」
助け船とは、そう・・・王后ソニアだ。
「義母上様ーーー!!お助けを!!つかまりましたー。」
「何と?そなた、すぐ捕まるのう。」
「また、母上ですか!!」
「たわけ、リュート。母が義娘と出かけて何が悪いのだ?ちゃんと、星まつりの時間には帰ってくるつもりじゃ、安心せよ。ほほほほほほ。おっあれに見えるは、鷹(ダリア)じゃないのかえ?」
「えっ鷹(ダリア)ですか?」
鷹(ダリア)に気を取られたリュートを残して、ソニアが月涼に『行くぞ!』と合図し、3人はいそいそと出かけるのだった。
「また、やられた・・・。母上には、負ける。」
リュートもフルルたちも、呆れて見送るしかなかった。
「殿下・・・とりあえず、星まつりの時間には、お帰りになると約束されましたので、準備だけしておきますわ。」
フルルが、ため息をつきながらリュートに言うと、リュートも同じようにため息をついて、頷くのだった。
今日は、年に一度の星まつりがある日だ。
星まつりの起源は、双頭竜族が青華国に流れ着いた日に、大地浄化の祈りを施した日である。そして、その日は、千の星が流れ、その星に祈りをすれば、願いが叶うといわれる日だ。
リュートは、月涼と初めての星まつりで、かなり楽しみにしており、そのため、公務を減らして出かけようと準備していたのだ。
『仕方ない、戻るまで公務に勤しむしかないな・・・。だが、父上にも再三お願いしているのに、母上とリアの行動範囲は、広がるばかりだ・・・何もなければ良いのだが。』
リュートの心配をよそに二人は、領地の見分を楽しんでいた。つまり、二人にとって、遊んでいるわけでなく公務でもあったのだ。
「良かったのか?リア。今日は、星まつりじゃ・・・。準備をして出かけたかったのではないのか?」
「義母上様・・・。この先何度もやってくる星まつりです。間に合えば良いのです。さあ、今日の領地は?どこですか?」
「うむ。早う帰らねばならぬからの、一番近い、農村に行くぞ。」
「はい!!」
藍を伴い、二人は、城よりほど近い農村アルダに向かった。
城から出た月涼たち3人をテソの丘の上から、遠眼鏡で確認しているものがいるとも知らず・・・。和気あいあいと農村の村人と会話し、農地の様子を確認した後、星まつりに間に合うように月涼は、帰路についた。
そして、初めての盛大な星まつりが始まる。大神殿で、神女が点灯の儀式を始め町の浄化が始まる。
浄化の儀式が終わると、夜空に花火が打ち上げられ盛大なお祭りの始まりだ。始めの1刻ほどは、王族も儀式に参加して、浄化の儀式に加わるがその後は自由だ。
リュートが月涼に、お忍びの服に着替えるれるように、準備してくれていたおかげで儀式の後、直ぐに街へ出かけることが出来た。
「さあ、行こう。リア」
「ええ。リュート。あっそうだ、さっき、城に戻るときにいちご飴の屋台を見たの!!それを食べたい!!」
「ああ。分かったよ。じゃあ、まず、そこだな・・・。」
リュートは、月涼と手をつなぎその姿を見つめながら、『幸せだな』と心から感じていた。そして、その日がいつもの様に・・・終わると思っていた。
月涼もまた、同じように思いたかった。
その後の月涼のお話は、また、違う場所で・・・。
読者の皆様!!ありがとうございました!!!本投稿で完結となります。
この続きは、タイトルを変更してシリーズとして書いていきますので、引き続き宜しくお願い致します。
※次作の関係で最後の一文が変更されました。
男装して!今日も皇室の秘密を守ります・・・!!今回は、ただの舎人のはずですが? 華楓月涼 @Tamaya78
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