第4部 第9話 重慶との取引

ペンドラムは、リュートに重慶の処遇を聞きに来たのだった。


「さて、今回は、お客様の様ではございません。どういたしましょうか?」


「今、どこにいる?」


「はい。一応、高位者用の牢に入って頂いております。」


「そこに、しばらく入れておいていい。後で、会いに行く。」


「分かりました。では、続きをどうぞ・・・。」


そう言ってペンドラムが去った後、月涼が聞いた。


「続きって何?」


プッと噴き出し、月涼の頬にチュッとするとまたくすぐって、リュートは、大笑いをした。


「これかな?ハハハハハ。フルルに言っておかないとな・・・婚儀までに何とかしてもらえるように・・・・・・ハハハハハ。」


「えっ何をですか?フルルにまた、叱られるの嫌なんですけど・・・・・。」


その夜リュートは、月涼が和めるように、青華国の美しい街並みの話や、美味しい食べ物の話をしたりして、眠りにつくまで添い寝をして、明け方、私室に戻った。


その朝、フルルたちがバタバタとやってきて大騒ぎを始めた。


「おはようございます!リァンリー様!!」


「なあに?・・・朝からやけに元気ね?」


この騒ぎに何か変なことしたんだろうか?と思う月涼。


「おめでとうございます!婚儀前ですが・・・よろしゅうございました。」


「はっ?何のこと?」


「もう、とぼけないでくださいまし・・・。」


「殿下は、明け方に私室にお戻りと伺いました。」


「うん。そうみたいだね。いろいろ、お話しながら眠るまでそばにいてくれたわ。岬からの景色の美しさや蜂蜜のお菓子とか・・・あと・・・何だっけ?。」


「そうですか~。それから?」


フルルもルーランもルキ、ラキまで目を輝かせている。


「それから?って何・・・・?」


「いえいえ・・・殿下はお優しかったですか?」


あまりの勢いで3人が聞くので、たじろぐ月涼。


「殿下は、いつも優しいわよ。やーねー。何が聞きたいの?さっきから・・・。」


フルルは、会話を進めれば進めるほど何かおかしい・・・と感じ始めていた。ルーランたちもだ。


『もしや、一晩、何も無かったのか?朝まで、いらっしゃったのに・・・。』と3人揃って、やっと思い始めていた。


そんな、変な空気が流れた中、リュートがやって来た。


「おはよう。リァンリー。よく眠れたかい?」


「ええ。殿・・・リュート。・・・フルルたちったら、変なことばかり聞くんだけど・・・。今朝は。」


「どんな事かな?クックックッ」


状況をなんとなく察して、笑いそうなリュートだった。


「突然、おめでとうございます。とか言って・・・殿下は、優しかったかのかとか~。」


横で、それ以上言うなと無言で首を振る、フルルたちを無視して、さらに言おうとする月涼。


「リァンリー。本当に分からない?」


ちょっと、笑い半分、呆れ半分で聞き返すリュート。


「ええ。もう、朝から、みんなの方が変よ。殿・・・リュートも。」


フルルたちは、もう、いたたまれない思いで・・・リュートの顔を見上げた。


「フルル、賢い君なら状況を掴めたかい?」


コクリと頷くフルルは、早速、リュートに言った。


「殿下、お任せ下さいまし。婚儀までに、ご教育の手配を致します。ルーラン・・・一緒についてきなさい。ルキとラキは、リァンリー様の着替えを手伝いなさい。」


フルルは、そう言うとリュートに一礼をして、部屋を後にした。


「ちょっ・・・ちょっとフルルーーー。教育って何???。」


月涼の呼び止めも空しく・・・去っていくフルル。それを面白可笑しく思うリュートだった。


「リァンリー、フルルの事は、良いから。着替えたら、重慶の所に行くからついてきて欲しい。」


「ええ。それは、良いんだけど・・・フルルったら・・・。」


ちょっと、わけが分からず・・・ぷーっと剥れる月涼だった。


リュートと月涼が高位者用の牢まで、足を運ぶと重慶は不貞腐れて・・・寝台に寝転がっていた。


「よう。お二人さん・・・。やっと出してもらえるのかな?」


寝台から起き上がりもせず言う重慶。


「本題に入りましょう。」


切り出したのは、月涼だった。


「ああ。そう来なくっちゃ!!」


リュートは、止めても無駄だと思ったのか静観していた。


「で、何が知りたい?何が欲しい?私の・・・。」


「そうだな~。できれば、お前ごと持って帰りたいところだけど・・・。鬼の様に怒った顔の殿下が横にいるからなーーー。ハハハハハ。」


リュートの怒りを無視して話す重慶。


「重慶、なぜ?この様な軽はずみな行動をした?地盤が整うまで待つと言っていただろう?」


リュートが聞く。


「そう、そこのお嬢さん・・・月涼が持っている人脈が有れば、地盤が整うのが分かったからさ。是非、こちら側についてもらえるように図らってほしい。」


「見返りは?」


月涼が単刀直入に聞く。


「見返りか・・・。の地位をゆるぎないものになる様に援護する・・・つまり、今後、北光国から攻め入ることのない同盟関係を作る。そして、青華国にもそれを約束する。その証明に、発掘された金を毎年、取れ高の3分の1を納める。」


「口では、なんとでも言える。それに、勝算は?」


月涼もリュートも同じように言う。


「あるさ。もう、仕掛けている・・・。それこそ、今回の和睦撤回の噂だ。皇室は、面倒事は、ごめんだと軍部に丸投げだ。軍部にはかなり根回し出来てきているが・・・一人欠けた。そいつを慕う者たちの内、皇室との血縁を濃く保っているものがいる。そいつが寝返れば・・・一気にひっくり返せる。」


「欠けた?・・・・・・仁軌さんか?」

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