第4部 第6話 夜市 2
重慶は、北光国と西蘭国の突然の和睦を不思議に思い調べてきたのだった。
これまで、小競り合いの様な戦を続けて、死守してきた土地を和睦条件に入れて解決し、劉将軍を篭絡して、同時に自国の内乱まで片付けたと聞いた時、それを陰で絵を描いたものがいると感じその者を味方にしたいと思ったからだ。
劉将軍を糸口に西蘭国に手引きしたものを探し続けると、ある舎人に行き当たった。月涼だ。
そんな時、斉明公女の事件が起きた。そこでも、関わっていたのが月涼だった為、策士の検討を付け、月涼を引き入れるべく探していたのである。あの、斉明公女が消える瞬間に、月涼たちの後ろで見張っていたのは、重慶の使者であったのだ。そして、月涼が斉明公女の後を追い、消息を絶ったと知って探しあぐねていた時に、奏と出くわしたのだった。
「とりあえず、東宮殿下の話を聞いてやれよ。月涼。場所を変えるぞ。」
そう言うと、重慶は、合図を出し、部下たちが月涼を取り囲んだ。月涼もこの状況に諦め、すんなり動向した。藍は、陰でジッと耐えて、連れて行かれる先を確認しペンドラムに、事の顛末を伝えに走った。
その頃、月涼が見えなくなり、フルルたちが真っ青になり慌てて、探し回っていた。
「どうしよう…。フルル様。」
ルーランが、探し回っても見つからずフルルに聞くが、フルルも動転していた。
護衛達にも探してもらうが見つからず、やむなをえず、ペンドラムに報告するに至った。
ペンドラムが藍から報告を受けている時に、泣きながら帰って来たフルルやルーランたちが来た。
「申し訳ございません。リァンリー様が・・・。」
泣いて項垂れる3人に藍が言った。
「大丈夫。居所は、押さえましたから。後は、お迎えに上がるだけです。フルル様たちは、お部屋に戻って、月・・・リァンリー様が帰られた時に、休める準備をなさってください。」
「えっ?あ・・・あなた、藍?」
「あっ藍様!」
ルーランたちも声をあげて驚いた。
「何なの?その格好?」
フルルが藍の姿を改めて見て問う。
「ああ。これ、可愛いですよね。ふふふ。」
「いえ、そうじゃなくって!!。」
「月・・・リァンリー様の後をつけるための変装ですよ。途中で、噴水に先回りはしましたけど、フルル様たち気付かなかったでしょ?ずっと後をつけてたんですから。私って~女装の名人ですからね!」
フルルたちは、呆れたり、ホッとしたり、藍の格好で和むのだった。
「フルルは、寝所の準備をルーランは、湯浴みの準備をルキとラキは、軽食を厨房に行って作ってもらってきなさい。リァンリー様がいつ戻っても良いように・・・良いですね。」
和んでいる雰囲気を一喝してペンドラムが指示した。
「は、はい。ペンドラム様。」
4人は、持ち場へと急いだ。
藍は、月涼から噴水での待機を言われた後、事を起こす前に、ペンドラムに事情を伝えて指示を仰いでいた。ペンドラムに指示を仰ぐことは、藍の単独行動だったがこの機転が利いたおかげで、テスタの街にいるリュートや仲達、仁軌にも早く状況が伝わった。
「藍、リァンリー様の居所は、噴水から西へ行った、病治院の建設地ですね?」
「はい。そこの資材倉庫に潜伏しています。」
「とりあえず、精鋭を配置して、取り囲みましょう。リュート様の戻りが間に合え・・・良いのですが。」
一方、ペンドラムから火急の報告を受けたリュートは、仲達と仁軌にも伝えた。
「私は、急ぎ戻ります。貴方方はどうされますか?」
仲達は、奏がいるはずだから戻ると言い、仁軌は、残って安里たちの情報をさらに集めることにすると言った。囮の件もあるからだ。
テスタに残った仁軌は、国境の警備が甘くなったと分かり、北光国に入国し華土で囮の情報を探った。安里を逃がすために、珠礼が来ている気がしたからだ。
華土に潜入した仁軌は、掲示板を見ていた。そこには、安里たちの姿絵が張り出されており人数も書かれている。『二組の夫婦として動いているのか・・・』
その時だった。後ろから声がする。
「仁軌様・・・?。」
「ん?」
振り向くと其処には、屋敷長を任せていた鉄心だった。
「鉄心!無事だったか!」
「はい。屋敷の者は、散り散りになりましたが・・・。青華国の手引きで逃げれました。私たちは囮を買って出て、ここまで・・・。」
仁軌に会えた嬉しさで、鉄心は泣きじゃくりながら話した。
「他の者はどうした?どこに潜伏している?」
鉄心は、山の方を指さし答えた。
「あの山の廃屋に3人・・・珠礼さんが・・・。怪我をしていて。熱が下がらなくて・・・薬を買いに。」
「珠礼が?分かった!案内してくれ。」
「あ、はい。でも、まだ、薬を手に入れられず・・・。」
「大丈夫だ。常備薬がある!!」
廃屋につくと、珠礼の状態は、あまり良くなく怪我をした肩が膿んでいた。
『まずいな・・・このままだと壊死する。』仁軌は傷の状態からそう思った。
「鉄心、国境前の警備守屋敷が分かるか?」
「はい。分かりますが・・・危険では?」
「大丈夫だ・・・。今は、かなり手薄だ。警備守の反対側の屋敷裏に、荷馬車を隠している。それを近くまで持って来てくれ。馬が逃げていれば・・・調達するんだ。これを持っていけ。」
仁軌は、鉄心に調達するための銭を渡した。
「分かりました。急いで持ってきます!!」
「おう!他の者は、荷造りして出立準備だ。」
輪が残してくれていた荷馬車を覚えていた仁軌は、それを利用して、珠礼を青華国へ運ぶことにした。
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