第八百四十七話 高橋悠里は『東京2020オリンピック、パラリンピック』が中止になることを知る
悠里がリビングに行くと、祖父と父親がソファーに並んでテレビでニュース番組を見ていた。
お風呂が空くまでドラマかバラエティー番組を見たい悠里は、祖父と父親に交渉しようとしたが、ニュース番組の内容に驚いてテレビ画面を見た。
ニュース番組は『東京2020オリンピック、パラリンピック中止の方向へ』と伝えている。
「オリンピック中止になるの!?」
悠里はテレビを見ながら叫んだ。
「そうらしいぞ。東京オリンピック、パラリンピックが中止になることは、金曜日の夜に初めてニュースで聞いた」
祖父がそう言った後に、父親が口を開く。
「でもオリンピックを中止すると、莫大な違約金を払うことになるんじゃないの?」
「オリンピックを開催したせいで、新型コロナの患者数が急増する方がまずいだろう。医療崩壊になったら、人が死ぬんだぞ。オリンピックなんてやってる場合じゃない」
「でも、お金を払うのは嫌だよねえ。ただオリンピックを中止するだけなのにね。新型コロナがなければ、今頃、楽しくオリンピック待ってたかもしれないのにね」
父親と祖父の会話を聞いた悠里はそう言ってため息を吐く。
父親と祖父が悠里のためにソファーにスペースを作ってくれたので、悠里は祖父の隣に座り、家族三人、ソファーに並んで座って『東京2020オリンピック、パラリンピック中止の方向へ』というニュース番組を見た。
「お父さんとお祖父ちゃんは、もうお風呂入った? お祖母ちゃんがお風呂から出たら、私がお風呂に入っていい?」
「いいぞ。俺はもう入ったからな」
「俺はまだだけど、いいよ。悠里は『アルカディアオンライン』をプレイしたいんだよね」
「お父さん、わかってるっ。そういえば、お祖父ちゃんとお父さんは『アルカディアオンライン』をプレイしないの?」
「ニュースも見ないとな。ゲームばっかりやってるわけにはいかない」
祖父の言葉を聞いた悠里は、大人は面倒くさいなあと思った。
悠里は許されるなら、ゲームばっかりプレイしていたい。
その後、祖母がお風呂を使い終えたので、入れ替わるように悠里はお風呂に入った。
お風呂に入り、寝る支度を万全に整えて、今日はゲーム三昧の楽しい時間を過ごすのだ……!!
土曜日に夜更かしして、日曜日に渡り、延々ファンタジーVRMMO『アルカディアオンライン』の世界に居続けるのは、きっと楽しい。
『アルカディアオンライン』は一日のプレイ時間が6時間と決まっているけれど、二日連続でプレイすれば12時間遊べる。
日曜日には祖母とクッキーを作る約束をしているから、延々ゲームをして、朝になったら爽やかに起きる計画だ。
大丈夫。きっとできる。やればできる!!
悠里は湯舟に入って楽しい計画を考え、わくわくしながら手足を伸ばす。
『アルカディアオンライン』にログインしたら、情報屋からの返信もチェックしよう。錬金もたくさんしたい。
砂糖を作るために、海水を汲んでこないと。
錬金を成功させて、海水から塩も作りたい。あとNPCの家族の顔も見に行きたい。
『アルカディアオンライン』でやりたいことがいっぱいある。今日は、ゲームをする時間もいっぱいある!!
悠里は、張り切って湯舟から立ち上がった。
素早くお風呂を終えて、手早く髪を乾かして、早く『アルカディアオンライン』にログインしよう……!!
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