第八百四十五話 マリー・エドワーズは錬金した白い粉を真珠とクレムに味見してもらう
「わうー!! わんわぅ、わんっ!!」
真珠はマリーを熱く見つめて吠えた。
真珠は、マリーの指についた白い粉を舐めてみたい!!
「真珠、塩を舐めたいの?」
マリーは真珠語を正しく理解して問いかける。
「わんっ」
真珠はマリーの言葉に肯く。
マリーは真珠を心配そうに見つめて口を開いた。
「真珠、塩はしょっぱいよ。大丈夫? 犬とか猫ってしょっぱい物を食べたらダメなんじゃなかった? 私、ペットとか飼ったこと無いから詳しくは知らないけど……」
マリーの言葉を聞いたクレムが、少し考えて口を開いた。
「真珠はテイムモンスターだし『アルカディアオンライン』はゲームだから大丈夫じゃね? このゲームはプレイヤーとテイムモンスターの痛覚設定0パーセントだし、最悪、教会に死に戻るだけだと思う」
「わんっ」
真珠は塩を舐めたくて肯く。
以前『すっぱい』オレンジジュースを飲んだことがあるので『しょっぱい』も、きっと大丈夫だと真珠は思う。
マリーはわくわくしながら尻尾を振り、目を輝かせている真珠の口元に、塩をくっつけた自分の人差し指を差し出した。
真珠はマリーの人差し指を舐める。……ん?
これが『しょっぱい』?
「マリー。真珠、なんか首を傾げてるけど」
クレムは、マリーの人差し指を舐めた真珠の反応に疑問を抱いて言う。
「オレも味見していい?」
「いいよ」
クレムはマリーの許可を取り、白い粉が入ったツボの中に人差し指を突っ込んだ。
そして、クレムは自分の指についた白い粉を舐め、眉をひそめる。
「マリー。これ塩じゃない。砂糖だ」
「砂糖!? なんで!? 私、塩を錬金したはずなのに!! 海水から作ったんだよ!!」
クレムの言葉を聞いたマリーは叫んだ。
「やっぱりマリー、錬金失敗したんだよ。錬金失敗すると、錬金したかった物の元になるアイテムとか、クズアイテムになることもあるけど『作りたかったアイテムの反対のアイテムができる』ってこともあるんだ」
錬金をやり込んでいる、錬金術師プレイヤーのクレムの『錬金講座』が始まった。
マリーと真珠は真剣な顔でクレムの話を聞いている。
「たぶん、マリーは錬金を失敗して、塩を作りたかったのに、正反対の砂糖ができちゃったんだと思う。でも、これ大発見なんじゃね? 塩は売ったらダメだけど、砂糖は売れるんじゃね? 海水は海から汲んできたらタダだし、ボロ儲けできる気がする。情報屋に情報売れそうなヤツじゃん」
クレムの言葉に、家族のために生活費を稼ぎたいマリーは目を輝かせ、真珠はマリーの『お金大好き』オーラを感じ取ってため息を吐く。
クレムはさらに言葉を続けた。
「今まで、塩を錬金するプレイヤーの数が少なかったんだと思う。しかも、失敗するプレイヤーがいなかったんじゃないか? だから、海水から砂糖が作れることは、まだ知られてないんだと思う。オレは知らなかったし」
錬金をやり込みまくっていて、錬金術師のフレンドもいるクレムの言葉を聞いたマリーは『海水から砂糖を作れる』という情報を、情報屋に売ろうと決意する。
理屈が知られたら、簡単に真似されてしまうから、その前に情報を売りたい!!
「クレム、真珠。私、情報屋さんにメッセージ送るねっ」
「じゃあオレは、錬金窯に残った砂糖をツボに移しとくよ」
「よろしく。クレム」
「わんわぅ、わ?」
「真珠はクレムを見守ってて。重要な任務だよっ」
「わんっ」
真珠はマリーの言葉に肯く。
『重要な任務』という言葉の意味はよくわからなかったけれど、真珠はクレムを見守る!!
「ステータス」
マリーはステータス画面を出現させて、フレンドの情報屋にメッセージを書き始めた。
***
光月14日 夕方(4時11分)=5月29日 20:11
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