第八百四十三話 マリー・エドワーズと真珠を抱っこしたクレムは、お喋りをしながら錬金塔に向かう

真珠は錬金塔に向かう途中、クレムに甘えて抱っこしてもらった。

マリーと真珠を抱っこしたクレムは、お喋りをしながら錬金塔に向かって歩く。


「マリーは何を錬金しようとして失敗したんだ?」


「し……ろい粉だよ」


クレムに問いかけられたマリーは『塩』と言いかけて『白い粉』と言い直す。

塩を作ることも売ることも『アルカディアオンライン』の世界では罪になるので、人目があるところでは口にできない。

マリーの言葉を聞いたクレムは、眉をひそめて口を開いた。


「白い粉? ゲームのアイテムなら『白い粉』っていうのはありそうだけどさ。『アルカディアオンライン』は作りたい錬金アイテムの名前を具体的に言った方が、錬金の成功率が上がるぜ」


「それは、フレンドのマーキースから教えてもらって知ってるんだけど。でも人目があるところでは言えない白い粉を作りたいから、今はこう言うしかないんだよ」


「マリー。ゲームとはいえ、ヤバい薬を作ろうとするのはヤバいぞ」


クレムはマリーを諭した。

マリーは憤然とクレムを見上げ、口を開く。


「身体には何の問題もない白い粉なのっ。でも今は、白い粉の名前を言えないのっ」


「わけわかんねー」


「わうわうんわー」


クレムに抱っこされている真珠は、クレムの言葉の真似をした。意味はわかっていない。

マリーは話題を変えるために、口を開く。


「クレムは、最近は何を錬金してるの?」


「オレは錬金スキル上げとプレイヤーレベル上げを兼ねて、フレンドにプレゼントするアイテムを錬金してる。でも『ルーム』取得までの道のりは長そうなんだよなー。オレ『ルーム』をゲットして、錬金窯とか置きたいんだよ」


「錬金塔の作業室じゃダメなの?」


「くぅん?」


クレムの言葉を聞いたマリーと真珠は首を傾げる。

クレムは抱っこしている真珠の頭を撫で、マリーに視線を向けて口を開いた。


「オレのフレンド、いろんな街にいるんだよ。最初は皆、港町アヴィラにいたんだけどさ。今はワールドクエストで『常若の森』に行ってる奴が多くて、会いたくても会えないんだよ。でも『ルーム』があれば、各教会にあるフローラ・カフェから集合できるだろ」


「私、今、ワールドクエスト全然参加してない。クエスト確認も全然してないよ」


「たまにはクエスト確認した方がいいと思う。参加できそうなワールドクエストは、参加しておいた方がお得じゃん」


「だよね。ゲームをやめる前に『転送の間』でクエスト確認してみるよ」


マリー・エドワーズと真珠を抱っこしたクレムは『アルカディアオンライン』の話や錬金スキルの話をしながら歩き、錬金塔に到着した。

マリーは真珠を抱っこしたクレムを自分の作業室に招き入れる。


***


光月14日 昼(3時58分)=5月29日 19:58

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