第八百四十二話 マリー・エドワーズと真珠は『復活の間』でクレムと合流し、マリーはクレムにスイーツを奢る約束を果たせてほっとする

真珠の青い目が、クレムの姿を捉えた!!


「わうう!!」


真珠はクレムの名前を呼んで、駆け出す。

マリーは、突然走り出した真珠に置いて行かれた。


「真珠、待って……!!」


マリーは必死に真珠の後を追いかける。


マリーは、真珠もクレムも、死に戻ったプレイヤーが戻ってくる魔方陣がある『復活の間』から出ることはないというのが、せめてもの救いだと思った。

錬金術師ギルドまで走り通した時より、疲れなくて済む。たぶん。


マリーと真珠に会うために、港町アヴィラの教会に死に戻ってきたクレムは、自分に向かって一直線に走ってくる白い子犬……真珠に気づいた。


「わううー!!」


真珠がクレムの名前を呼ぶ。


「真珠!! 久しぶりだなっ!!」


クレムはそう言って、両手を広げて真珠を迎えた。

真珠はクレムの腕の中に飛び込む。

クレムはその流れで、真珠を『高い高い』した。


「真珠。そういえばマリーは?」


『高い高い』を一回やって、クレムは真珠に問いかける。


「わうーっ!!」


真珠はクレムを探すのに夢中で、マリーのことを忘れていた!!


「真珠ー!! クレムー!!」


真珠に置いて行かれたマリーが追いついた。

クレムはマリーに笑顔を向け、口を開く。


「マリー。久しぶりっ」


「そうだねえ。久しぶりだよね。クレムには、ずっと会えなかったもんね。忘れないうちに、スイーツ渡しちゃうね。ステータス」


マリーはステータス画面を表示させ、アイテムボックスからクレムのために買ったスイーツを取り出した。


「クレム。奢りの約束、遅くなってごめんね。スイーツどうぞっ」


マリーはそう言って、スイーツをクレムに差し出す。


「サンキュ、マリー。真珠、スイーツしまうから、床に下ろすな」


クレムは抱っこしている真珠に言い、真珠はクレムの言葉に肯いた。

クレムは抱っこしていた真珠を床に下ろしてスイーツを受け取り、自分の左腕の腕輪に触れさせて、アイテムボックスに収納する。

マリーはクレムへの、スイーツを奢る約束を果たせてほっとした。


『アルカディアオンライン』ではプレイヤー同士が待ち合わせするのは、それなりに手間が掛かる。

『死に戻り』の拠点にしている教会が同じなら、死に戻れば教会の『復活の間』で待ち合わせすることができるけれど、拠点としている教会が異なれば、それもできなくなる。『ルーム』を持っているプレイヤーなら、少し事情は異なるのだが。


マリーはスイーツを収納し終えたクレムに視線を向けて、口を開く。


「クレムはこの後、錬金塔に戻って錬金するの?」


「せっかくマリーと真珠に会えたんだから、一緒に遊ぼうぜ。パーティー組んで、モンスター討伐とか行く?」


「わんっ」


クレムの言葉に真珠は肯いた。

真珠はクレムと一緒にいられるのは嬉しい!!


「真珠はモンスター討伐したいの? 私はクレムに錬金教えてもらいたいんだよね。さっき、また錬金失敗しちゃったみたいなの」


「マリーは、単にMP上限値が低すぎるんじゃね?」


「そうかなあ……」


「じゃあ、とりあえず、マリーの錬金を見てやるよ。真珠、それでいいか?」


「わんっ」


真珠はクレムの言葉に肯いた。

真珠も錬金が好きなので、クレムにいろいろ教えて欲しい。

話はまとまった。

マリーと真珠、クレムは教会を出て、錬金塔に向かった。


***


光月14日 昼(3時49分)=5月29日 19:49

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