第八百四十一話 マリー・エドワーズと真珠は『しっぺ』という遊びをして、教会に死に戻ってくるクレムを探す
マリーと真珠は『しっぺ』という遊びをするために、空中で、間隔をあけて、お互いの右手と右足を重ねる。
マリーの右手が上、真珠の右足が下だ。
マリーはテイムモンスターで『白狼』の、子犬な真珠の高さの合わせるために、中腰になっている。
『しっぺ』という遊びは、一番下の手の人が素早く手を引き抜き、自分より上に手を重ねている人の手を勢いよく叩くというルールだ。
『アルカディアオンライン』は痛覚設定が0パーセントなので『叩かれると痛くて嫌だ!!』というスリルと恐怖を味わうことはない。
でも、緊張感と駆け引きは楽しめる。
『しっぺ』という遊びは、西部劇のガンマンが、一対一の決闘で銃を撃ち合うようなものだ。
マリーは緊張しながら真珠の気配を窺う。
マリーの中の人の悠里は、幼稚園生から小学校低学年の時まで、幼なじみの晴菜や圭と一緒に、幼稚園生から小学校低学年の時まで『しっぺ』で遊んできた経験者だ。
初心者の真珠に、一回目から負けるわけにはいかない……!!
港町アヴィラの教会内にある、プレイヤーだけが立ち入れる『復活の間』で、空中に、間隔をあけて、お互いの右手と右足を重ねている幼女と白い子犬に気づいたプレイヤー数人が、何をやっているのだろうと思いながら遠巻きに見つめる。
呼吸を整え……真珠が動いた!!
マリーは真珠が動いたことに気づいて、素早く手を引こうとしたが、マリーを手を引くよりも先に、真珠の右足がマリーの右手を叩く!!
叩いた真珠も叩かれたマリーも痛くない!! でも、マリーは右手を叩かれた衝撃を感じてびっくりした。
「私の負け。真珠、強いねえ」
「わんっ」
マリーに勝った真珠は嬉しくて胸を張り、尻尾を振る。
幼稚園生から小学校低学年の時まで、幼なじみの晴菜や圭と一緒に幼稚園生から小学校低学年の時まで『しっぺ』で遊んできた経験では『アルカディアオンライン』のAGI値の差を埋めることはできなかった。
真珠は白い子犬のように見えるが『白狼』というレアモンスターで、各種能力値が高い。
『アルカディアオンライン』はゲームなので、基本的には能力値の高さこそが正義だ。
『アルカディアオンライン』で『しっぺ』の勝利者になるためには、ひたすらAGI値を上げればいいという、残酷でシンプルな事実に、マリーと真珠はまだ気づいていない。
幼女と子犬の『しっぺ』勝負を見ていたプレイヤーたちは、勝負が終わり、立ち去る者と、自分たちも『しっぺ』で遊び始める者に分かれた。
マリーと真珠の『しっぺ』一回目が終わった直後に可愛らしいハープの音が鳴った。
フレンドからのメッセージが来たようだ。
「真珠っ。クレムからの返信が来たかもっ」
「きゅうん……」
真珠は『しっぺ』二回目で遊ぶ気満々だったので、マリーの言葉にがっかりした。
マリーはがっかりしている真珠をスルーして、フレンドからのメッセージを確認する。
メッセージの送り主はクレムだ。
♦
マリー。今、死に戻って教会行くから、真珠と待ってて。
♦
クレムからのメッセージを読み終えたマリーは『しっぺ』で遊べなくてがっかりして項垂れている真珠に視線を向けて、口を開いた。
「真珠。クレム、今から教会に死に戻ってくるって。真珠がクレムの匂いを探してっ」
「わんっ」
マリーの言葉を聞いた真珠は元気になって肯く。
クレムが来たら、クレムとも『しっぺ』で遊べる。
真珠は張り切ってクレムの姿を探し、クレムの匂いを嗅ぎ分けようと、鼻をひくつかせる。
***
光月14日 昼(3時33分)=5月29日 19:33
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます